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辺野古に基地が出来ても普天間は返還されるのか?

総工費は2兆5500億円。杭は7万7000本。県民投票は様々な事実をあぶり出した

岩崎賢一 朝日新聞記者

拡大県民投票結果を受けて記者会見する玉城デニー沖縄県知事=2019年2月25日、沖縄県庁
 米軍基地を建設するために沖縄県名護市辺野古の沿岸部を埋め立てることに対し、沖縄県民は住民投票で「ノー」の意思を明確に示した。

 投票率、得票数、県民の空気、民主主義、そして今後の行方について、「『辺野古』県民投票の会」代表と二人の政治学者に話を聞いた。

 沖縄県民は民意をあらゆる方法で示し続けている。今度は国民全体が自分の問題として考えないといけない。その一助になることを願う。

「投票率50%以上は想定外」

 県民投票の会代表の元山仁士郎さんは、東京で通っていた大学院を休学し、この1年、県民投票の実現に向けて取り組んできた。全市での実施を訴え、ハンガーストライキもした。その行為に対して日本政府には揶揄するような対応も見られた。

 県民投票翌日の2月25日、元山さんに電話でインタビューした。1月4日に沖縄でインタビューしたとき、全自治体が参加するか不透明だったときの悲壮感と比べると、一つの山を越えた安堵感があるように思った。

「県民投票に取り組んできて良かったと思う。それは何よりも県民投票をきっかけに、沖縄の各地の人たちと話すことができた。県民の間で考えるきっかけを提供できたと思う」

 今回の投票率は52.48%。1996年の県民投票の59.53%より約7ポイント下がった。96年は基地の整理・縮小と日米地位協定の見直しを求める「賛成」票が約48万。今回は辺野古の埋め立ての「反対」票が約43万票。いずれも圧倒的な差がついている。

 昨年9月に行われた県知事選では、「辺野古ノー」の立場をとる玉城デニー氏が、自民・公明・維新・希望が推薦する前宜野湾市長の佐喜真淳氏らを破り初当選した。投票率は62.24%で、玉城氏が約39万票、佐喜真氏が約31万票だった。辺野古反対派は今回の県民投票で、知事選より投票率が10ポイントほど下がるなかで、知事選の玉城氏の得票を上回る票数を得たことになる。

 元琉球新報論説委員長で現在は沖縄国際大学・大学院教授の前泊博盛さんは「投票率が50%を超えたのは想定外でした。自民党は自主投票を決め、事実上、投票に行かないように有権者に求めるような動きをしていたからです」と振り返る。

 琉球大学と早稲田大学で沖縄の政治行政や住民投票を研究してきた政治学者の江上能義さんも投票率が50%を切るのではないかと見ていた。ただ、「1996年と今を比較すると政治構造が違う」と指摘する。

「1996年の時は、公明党が基地反対派に近い立場を取っていました。それが今は、公明党が政権与党として、県民投票への立ち位置が変化したことによって、投票率に与えた影響が大きいと思います。今回の県民投票では、自民党も公明党も傍観、静観しました。今回の県民投票は実施を巡り、当初は5市が実施しないと表明しました。このような出来事も、政権からの風圧と感じて、投票率を下げた要因になったと思います」

 知事選で玉城氏が当選した要因として、保守系の票が玉城氏に流れたという分析があるが、今回の県民投票で朝日新聞が行った出口調査では、自民支持層の45%、無党派層の79%が「反対」票を投じている。

 前泊氏は「安倍政権は、知事選は色々な要素があるので必ずしも玉城氏が得た票が辺野古反対ではないという見方を示してきました。しかし、今回の県民投票はシングルイシュー、つまり争点は1つです。その結果、知事選を上回る得票になったのです。日本では選挙民主主義が崩壊しているので、このような県民投票が必要になったのです」と分析した。

 昨年12月の土砂投入を始め、その後の県民投票つぶしとも見られるような政治的駆け引き、そして建設地の海底の軟弱地盤など次々と新しい問題が浮上してきた。

 江上氏は「昨年12月に政府が埋め立てを強行し、赤土や軟弱地盤など色々な問題が吹き出してきています。そのようなことも重なり、県民が反感を強めたのではないかと思います。つまり、『政府が言っていることは、めちゃくちゃだ』という印象を持ったのだと思います。そういう声は、沖縄の自民党関係者の中にもあります」と指摘した。

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筆者

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき けんいち) 朝日新聞記者

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで医療や暮らしを中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当を経て、現在はオピニオン編集部で「論座」編集を担当。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)。 withnewsにも執筆中。

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