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辺野古に基地が出来ても普天間は返還されるのか?

総工費は2兆5500億円。杭は7万7000本。県民投票は様々な事実をあぶり出した

岩崎賢一 朝日新聞記者

議論が深まらなかった面も

 私は昨年12月、年明け1月と沖縄を取材で訪れた。

 その時、元山さんは県民投票の目的について「私の中では二つのテーマがあります。『世代間の対話』と『島々の対話』です」と答えていた。全自治体での実施を求めてハンガーストライキを行い、注目を集めた。県民投票を終え、この間に対話が起こり議論が深まったのか、尋ねてみた。

拡大ハンガーストライキをした元山仁士郎さん

 元山さんらは、無党派層への投票への参加を促すため、音楽祭を企画したり、ツイッターで情報発信したり、市民ができる試みを重ね、「沖縄の新しい民主主義の可能性が見えてきた」と言う。

 一方で、「議論を深めるためには賛成、反対の互いの人たちが参加して、それぞれの主張を述べあって深めていくことが大切ですが、自民党が静観の姿勢をとっていたので、議論を深めていくことはかないませんでした。投票直前の最終盤の盛り上がりが欠けていたのではないかと思います」という反省も口にした。

 江上さんは、県民投票の実施主体である県があまり動かなかった点が影響したとみる。

「今回の県民投票は、若者主導で引っ張ってきました。宜野湾市長が玉城知事について『公平性や中立性が保たれるのか』という趣旨の発言をしましたが、県民投票の実施主体は沖縄県です。県がもっと県民が投票に参加するように動くべきだったと思います」

「そもそも、県民投票をやるということ自体、私はバイアスがかかっていると思います。意思を示したり、深く考えたりしない人が、県民投票をやろうとしますか。イギリスのスコットランドの独立を巡る住民投票でも同じです。自治体が呼びかけて、結果が逆になることだって、世界にはたくさんあります。どちらかに投票してくださいというのはいけないが、県に中立性を求めるのは間違っていると思います」

 江上さんは「県内の首長や地方議員といったプロの政治家の動きが弱かった。引いてしまっていた」とも話した。

拡大江上能義さん

辺野古に基地ができても普天間は返還されないかもしれない

 前泊さんは議論が深まらなかった面がありながらも「今回の県民投票をきっかけに、色々なことが表に出てきました」と前向きに評価する。

「新基地の埋め立て予定地の海底に、軟弱地盤があることを表に出来たこと。そこの地盤を安定させるには、7万7000本の杭を打たなければならないこと。沖縄県の試算では、総工費は2兆5500億円に膨らむこと。いろんなことが見えてきました」

「一方で、政府は工期や工費の詳細を出すことは不可能としています。土木の専門家には、全体工事の設計図がないまま工事を始めている、という厳しい見方もあります。軍事の専門家には、短い滑走路や駐機場の狭さから、完成しても役に立たないという見方もあります。それに加え、軟弱地盤の問題がある。地盤沈下があるような滑走路を米軍が使いたいと思うのでしょうか。辺野古の新基地ができても、普天間飛行場は残るかもしれない」

拡大前泊博盛さん

 元山さんも同じような見方だ。

「本当に普天間基地が返ってくるのか、最近、疑問に思わざるを得ません。軟弱地盤の工事、本当にできるのでしょうか。専門家の中には不可能という人もいます。政府は別の選択肢を示し、国民全体で考えて行かなければいけない時期だと思います」

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筆者

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき けんいち) 朝日新聞記者

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで医療や暮らしを中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当を経て、現在はオピニオン編集部で「論座」編集を担当。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)。 withnewsにも執筆中。

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