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危機的な世界で「不可欠な存在」になるために・上

国際協力NGOの現在と日本のNGOが抱える課題を考える

堀江由美子 公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシーマネージャー

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子どもたちの窮状

 いま、子どもたちを取り巻く状況は苛酷(かこく)である。東京都目黒区や千葉県野田市の痛ましい悲劇は記憶に新しいが、日本では、年間80人近くの子どもが虐待により死亡、メディアで取り上げられる事件は氷山の一角に過ぎない。子どもたちを苦しめるのは、虐待だけではない。7人に1人の子どもが貧困に陥り、学ぶこともままならない。

 世界に目を転じると、状況はさらに厳しい。年間540万人の5歳未満の子どもが予防可能な原因で命を落とす。6歳~17歳の子どもの5人に1人が学校に通えず、5人に1人が武力紛争下で暮らしている。

 私が子ども支援のNGOであるセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンで働いて17年になるが、子どもたちをめぐる窮状は苛酷さを増している。

 しかし、私たちには、こうした窮状に対してできることも多くある。

「戦後最悪の人道危機」に日本のNGOは……

 世界はいまや、「戦後最悪の人道危機」にあるといわれている。

 いたるところで紛争が起き、長期化し、約7000万人の難民・国内避難民が発生している。その約半数は子どもである。気候変動も深刻さを増し、自然災害による被災者数は2016年には5億人を超えた。貧富の格差は、かつてないほど拡大している。 

 こうした厳しい局面で、日本の国際協力NGO は人道・開発支援の活動において、しっかりとその役割を果たすことができているのか。世界情勢が著しく変化していく中で、日本の NGO が積極的に打ち出すべき点や課題は何なのか。課題を克服するためには、どのような施策が必要とされるのか――。

 こうした問いを探求するため、私たち有志グループは「NGO2030」を立ち上げ、外務省の委託事業「NGO研究会」として、調査・検討作業を続けた。日本の国際協力NGOが目指すべき大きな方向性とそのために必要なアクションを示すことを目的に活動し、3月1日には成果発表のシンポジウムを開催した。

 これを機に、国際協力NGOの現状と、日本の国際協力NGOの役割と課題について、2回にわたって考えてみたい。


筆者

堀江由美子

堀江由美子(ほりえ・ゆみこ) 公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシーマネージャー

共同通信社に勤務後、英国イーストアングリア大学院で農村開発修士号取得。1999年より(特活)国際ボランティアセンター山形でカンボジア農村開発事業に従事し、2002年にセーブ・ザ・チルドレン・ジャパン入局。海外事業部、法人連携部を経て、2010年より子どもの権利実現の観点から国際保健、栄養、持続可能な開発目標(SDGs)、人道危機、子どもの権利とビジネスなどの政策提言に関わる。共著に『ミレニアム開発目標:世界から貧しさをなくす8つの方法』(合同出版)

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです