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危機的な世界で「不可欠な存在」になるために・上

国際協力NGOの現在と日本のNGOが抱える課題を考える

堀江由美子 公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシーマネージャー

ワシントン訪問で受けた衝撃

⽇本国際交流センター主催のワシン トンDC訪問団に参加した筆者(右から 2⼈⽬)=2017年3月3日拡大⽇本国際交流センター主催のワシン トンDC訪問団に参加した筆者(右から 2⼈⽬)=2017年3月3日
 「NGO2030」結成のきっかけは、日本国際交流センター(JCIE: Japan Center for International Exchange)が2015年と17年に主催した、NGOスタッフと国会議員による米国ワシントンDCへの訪問団派遣だ。

 日本のNGOの組織基盤や政府との関係性の強化を目的とするこの訪問に、私も2017年、他のNGOのメンバーらと参加。米国国際開発援助庁(USAID:US Agency for International Development)や国務省をはじめ、政府高官や議会職員、影響力のあるシンクタンクなどを訪問した。

 どこでも率直な対話が交わされたが、なかでも衝撃を受けたのは、「NGOは戦略的パートナーである」「NGOなしには仕事は成り立たない」という認識が一貫して共有されたことだった。

 アメリカでは、1970年代後半から政府がNGOによる人道・開発支援の「費用対効果」に着目し、組織基盤を強化するべく投資をおこなってきたという。90年代になると、援助の持続可能性や民主主義や多様性の推進という名目も加わり、NGOの専門性の向上に政府がより積極的な投資をした。その結果、NGOセクターが飛躍的に成長。具体的には、1990年に政府の組織基盤強化支援を受けた資金規模が1000万USドルの10団体のうち、8団体が2010年には1億USドルの規模に拡大している。

NGOと政府の真の「戦略的パートナーシップ」とは

 訪問先の多くでNGOの強みとして挙げられたのは、現地の事情や情報に精通していることからくる専門性や機動性、効率性、より革新的なアプローチによる支援活動などだった。ある上級議会スタッフは、「開発援助の複雑な課題に関して、もっとも精通した専門家であるNGOスタッフに、政策の素案作りを依頼することもある」と言った。

 政府高官の一人は「議会に対して、行政が人道支援や難民支援のための予算増額などの意見を示すことは難しいが、NGOはそうしたアドボカシーを展開できる存在として重要なパートナーだ」とも強調した。NGOが一般市民から支持されているという背景がある。

 さらに印象に残ったのは、アメリカで最大のNGOネットワークであるインターアクション(InterAction)の代表と対話した際に聞いた話だ。

 ――アメリカ政府が助成事業に対して特定の活動を認めないという要件を付けたことがあった。NGO側はこれを表現の自由の侵害だとして訴訟を起こした。だが政府は裁判の間もNGOへの助成を保留することはなく、インターアクションやその他のNGOもまた、政府機関のUSAIDへの情報共有を続け、緊密な関係を維持した(訴訟は最終的に勝訴した)。

 「非政府組織」であるNGOの独立性を確保するためには、政府の政策に反対する自由がなければならない。政府の公的資金を受け取ることでNGOには一定の責任が生じるのは当然だが、真の「戦略的パートナーシップ」を築くには、NGOの独立性が確保されたうえで信頼関係が構築される必要があると、あらためて感じ入ったのを覚えている。

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筆者

堀江由美子

堀江由美子(ほりえ・ゆみこ) 公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシーマネージャー

共同通信社に勤務後、英国イーストアングリア大学院で農村開発修士号取得。1999年より(特活)国際ボランティアセンター山形でカンボジア農村開発事業に従事し、2002年にセーブ・ザ・チルドレン・ジャパン入局。海外事業部、法人連携部を経て、2010年より子どもの権利実現の観点から国際保健、栄養、持続可能な開発目標(SDGs)、人道危機、子どもの権利とビジネスなどの政策提言に関わる。共著に『ミレニアム開発目標:世界から貧しさをなくす8つの方法』(合同出版)