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米朝不調、よみがえるか「6者協議」

陰の主役は中国だった。舞台は日米中ロ南北の思惑が入り乱れる12年前の枠組みへ?

市川速水 朝日新聞編集委員

米朝首脳会談は当分開かれない

 今回の結果を受けて、今後、米朝関係や北朝鮮の非核化がどうなるか考える前提として、いくつか自明になったことがある。

 まず、米朝首脳会談は今後、半年、あるいは1年は開かれないだろう。

 夏から秋にかけて多国間の首脳会議が目白押しで米国首脳は大忙しだが、ほとんどの枠組みに北朝鮮は入っていないので、二人が出会うチャンスがない。

 非核化問題は、この個性的な米朝首脳がいる限り、一声で方向が定まるものなので、いくら2国間で実務協議をしても、経済制裁や終戦宣言など関係を大きく変えることには結びつかないだろう。

 トランプ氏にとって、元顧問弁護士のコーエン被告が下院で「詐欺師」「うそつき」とスキャンダルを暴露したことも打撃になり、非核化問題の優先順位が下がる可能性もある。

北朝鮮は核開発を進めていく

 次に、北朝鮮は隙を突いて核開発をさらに進めていくだろう。

 トランプ大統領が1対1会談に入る前の発言で、非核化について「速度は重要ではない。急いではいない」と繰り返した。これは「確実な取引をしないと成果に結びつかない」という意味の言葉だったが、北朝鮮にとっては、再び核開発を整える時間の猶予ができたことになるのは皮肉だ。

 トランプ氏は会談後の記者会見で「彼(金正恩氏)はロケットやミサイル、核にかかわるあらゆる実験はしないと言った」と語ったが、それが事実だとしても、米国への脅威は薄れるかもしれないが、すでに実用化されているといわれる短中距離ミサイルの脅威は変わらず、特に東アジアの安全保障はさらに危うくなる可能性がある。

北朝鮮の最大の要求は経済制裁の解除

 もう一つ、北朝鮮が求める最大の対価が、経済制裁の解除であることも明らかになった。

 トランプ氏は「全面的解除を求めてきた」のが物別れの理由だと説明した。その後、李容浩外相が記者を集めて「一部の解除だ」と釈明したが、これは言葉のあや、試合後の感想戦にすぎない。

 いずれにしても米国から見れば、妥協できないほどの制裁解除をいきなり吹っかけられたとみるべきだろう。そうであれば、経済制裁が続く限り北朝鮮国内は困窮し、核をカードに外交戦を挑むというチキンレースに戻ることになる。

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筆者

市川速水

市川速水(いちかわ・はやみ) 朝日新聞編集委員

1960年生まれ。一橋大学法学部卒。東京社会部、香港返還(1997年)時の香港特派員。ソウル支局長時代は北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議を取材。中国総局長(北京)時代には習近平国家主席(当時副主席)と会見。2016年9月から現職。著書に「皇室報道」、対談集「朝日vs.産経 ソウル発」(いずれも朝日新聞社)など。

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