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中国に急接近するサウジアラビア

中国に急接近するサウジアラビア

六辻彰二 国際政治学者

サウジアラビアの方針転換

 中国が急速に経済成長するなか、世界屈指の産油国であるサウジアラビアの対中輸出額は対米輸出額を凌ぐまでになっている。しかし、これまでサウジと中国は、表面上は大きなトラブルを抱えないまでも、親密とは言えない関係にあった。

 特に、もともとアラブの盟主を自認しているばかりか、冷戦時代からアメリカと安全保障と経済の両面で協力関係にあるサウジの側に、中国への警戒感は強かった。

 一例をあげよう。中国はこれまでにもサウジに「一帯一路」への参加を呼びかけており、これに応じてサウジ政府は、2017年5月に開催された「一帯一路」国際会議に、エネルギー産業鉱物資源大臣を務めるファリフ王子を出席させた。

 中国政府が各国に最高責任者の出席を呼びかけ、ロシアのプーチン大統領をはじめ何人かがこれに呼応したのと比べると、ムハンマド皇太子が出席しなかったことは、サウジの中国に対する伝統的な姿勢を象徴した。

 その背景に、自らの縄張りを脅かしかねない「一帯一路」への警戒感があったことは疑いない。今回のムハンマド皇太子の訪中は、この姿勢を大きく転換させるものといえる。

中国の足元をみる政治的嗅覚

 なぜ、サウジアラビアは中国に急接近するのか。そこには、大きく二つの意味がある。

 まず、サウジにとって中国に接近することには、困難に直面する中国の足元をみて自分を高く売る効果がある。

 トランプ政権との貿易戦争で、中国経済は大きなダメージを受けている。そればかりか、中国は「一帯一路」の立て直しも迫られている。モルディブなど「一帯一路」の沿線国で、中国から援助を受けた独裁的な政府が政変で崩壊するケースが生まれているからだ。

 こうした状況のもと、サウジと関係を強化できれば、中国にとってアラブ圏への進出に弾みがつく。つまり、このタイミングでサウジが中国に接近することは、いわば救いの手を差し伸べることに等しく、これは中国に対するサウジの発言力を高める効果がある。

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筆者

六辻彰二

六辻彰二(むつじ・しょうじ) 国際政治学者

1972年生まれ。博士(国際関係)。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。アフリカを中心に世界情勢を幅広く研究。著書に『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、共著に『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)など。その他、論文多数。Yahoo! ニュース「個人」オーサー、NEWSWEEK日本版コラムニスト。

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