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危機的な世界で「不可欠な存在」になるために・下

日本の国際協力NGOが目指すべき方向性と行動について考える

柴田裕子 特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)緊急対応部部長

「柔軟性」と「オープンな風土」を大切に

 そうした活動をしながらも、私は常にNGOの役割とは何か、本当に人のために立っているのかということを自問し続けてきた。

 NGOで働くうえで私が大事にしていることのひとつに、「柔軟性」と「オープンな風土」がある。

 NGOは、常に率直に意見を言い合い、変えるべきところは変えていく柔軟性を持つべきである。「硬直化」すると、日々、変転する現実に対応できないからだ。

 そのうえで、活動の内容や成果、情報をオープンにし、それを共有して学び合うことが肝要である。実際、事業の失敗や教訓を積極的に公開しているNGOも少なくない。他のNGOや組織はそれを共有し、次の活動にいかしていく。

公平、中立も不可欠な要素

 公平、中立もNGOに不可欠な要素だ。

 NGOが寄り添うべきは被災地にいる人々であり、特定の政府や組織の意図に偏るようなことがあってはならない。さまざまな立場の方々の人権が守られ、多様性を認め合いながら同じ社会で生きていけるよう、常に公平、中立な立場に身を置き、課題の解決に必要とあらば、政府に対してもモノを言うのがNGOの役割だ。

 そんなNGOだからこそできる、NGOにしかできないことがあると、私は信じている。先述したように「戦後最悪の人道危機」にある世界に対応するため、21世紀のNGOはどうあるべきか。本稿では、日本の国際協力NGOが目指すべき方向性と行動について考えてみたい。

歴史が浅く規模も小さい

人口の80%以上にあたる2000万人以上が人道支援を必要としているイエメン。ジャパン・プラットフォームの助成で運営された””子ども広場”で安心して遊ぶ子どもたち=2016年12月22日@ジャパン・プラットフォーム拡大人口の80%以上にあたる2000万人以上が人道支援を必要としているイエメン。ジャパン・プラットフォームの助成で運営された””子ども広場”で安心して遊ぶ子どもたち=2016年12月22日@ジャパン・プラットフォーム
 まず、日本の国際協力NGOが置かれている状況から見てみよう。

 欧米諸国に比べて、日本の国際協力NGOセクターは規模が小さく、歴史も浅い。また、個別の団体の規模も小さいところがほとんどである。

 具体的に言うと、現在日本には約5万以上のNPO法人団体が登録されているが、そのうち活動分野に国際協力をあげている団体は約1万だ(2018年9月30日現在。内閣府NPOホームページ)。東京のNGOネットワーク組織である国際協力NGOセンター(JANIC)の調査(NGOデータブック2016)によると、日本の国際協力NGOのうち、年間総予算額が1億円を超えているのはわずかに17%のみで、最も多いのは年間予算が1000万円未満(33%)の団体である。また、8割以上の団体が有給職員9人未満で運営されている。

 また、日本ではNGO・NPOというものに対する理解や信頼性は決して高いとはいえない。それを痛感した東日本大震災(2011年)の際の経験を、私は今でも忘れない。


筆者

柴田裕子

柴田裕子(しばた・ゆうこ) 特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)緊急対応部部長

企業での勤務経験を経て、2003年にピースウィンズ・ジャパン(PWJ)に入る。アフガニスタン事務所において、水・衛生、女性のエンパワメント、農業、収入向上など様々な事業を担当。その後、イラク、シエラレオネ、リベリア、南スーダン、スリランカ、東ティモールなどにおける人道・開発支援、パキスタン、ハイチ、東日本大震災など、国内外の災害支援に従事する。2012年3月にジャパン・プラットフォーム(JPF)に入り、海外事業部長として海外での人道支援への助成事業を統括し、外務省、アカデミアなどの各アクターとの連携調整、海外の支援団体との連携や、助成ガイドライン策定に関わる。2017年4月より現職。国内外の緊急支援を統括する。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです