日本人が中国経済をわかり難い理由
中国企業と言えば、アリババ(本社は杭州)、テンセント(深圳)、ファーウェイ(同)などITからAI、IoT等の企業が世界の話題を集めているが、いずれも活動の中心は中国沿岸部の南側にある。IT関連企業だけではない。アリババが提供するフィンテックの決済口座を提供するアリペイ(支付宝)の資金は、運用口座の余額宝に1元単位(1元は約17円)で移動できるが、その残高は1兆5千億元以上と中国の大手商業銀行一行の個人預金残高を上回る規模にある。この本社は上海だ。保険でも、昨年インシュアテックとして最初に香港市場への上場を果たした衆安保険が上海、インシュアテック子会社を複数持つ大手の平安保険の本社も深圳にある。

アリババ集団の馬雲会長(中央)や微信(ウィーチャット)を展開する騰訊(テンセント)の馬化騰会長(左端)も改革開放に貢献したとして表彰された=2018年12月18日、北京の人民大会堂
大学も、北京大学や清華大学のトップ2は北京にあるが、沿岸部南部にも浙江大学、復旦大学のほか、世界トップ10に入るビジネススクール中欧国際工商学院が上海にあり、最近では深圳大学の人気も上昇しているほか、北京大学もMBA専門校をHSBCと提携して深圳に設立している。また厦門近郊には新大学設立の話も出ている。
経済を牽引するのは沿岸部南部
中国経済は、大きく5億人を抱える沿岸部と、9億人の内陸部に分けて考える必要があるが、その沿岸部でも、今の経済発展の中心は南部(江蘇省以南)にある。しかし、例えば、赤いシリコンバレーと呼ばれる深圳は、経済成長の真っ只中にあり活況に満ちているものの、羽田・成田からの直行便は便利な時間帯に飛んでおらず、出張者が時間を有効に使おうとすると香港経由での往来とならざるを得ない。
ちなみに、中国は1人当たりGDPが1万ドルを超えるレベルまで成長してきているが、最も早く1万ドルを超えたのは2007年の深圳、蘇州、無錫が最初で、北京より2年早い。また、沿岸南部の多くの都市は北京とともに2万ドルも視野に入りつつある。北京は政治の中心であり、大手国有企業の本社も集中しているが、現在の中国経済を牽引するのは沿岸部南部なのである。
このような現実は、欧米とも違った環境であるが、特に東京一極集中が当たり前の日本人には分かり難い。