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小手先ではない虐待対策を。それは政治の務め

政策を作ったのに、想定できたのに、防げなかった悲しい事件。もう繰り返したくはない

三輪さち子 朝日新聞記者

政界で「懲戒権」削除の動き

 自民党の虐待の特命委員会(馳浩会長)は2月、中核市に児童相談所を設置することを義務づけたり、すべての児童相談所に弁護士や医師の配置を義務づけたりすることを、政府に対して要望した。

 自民党の児童養護の議員連盟(塩崎恭久会長)と、超党派の会が政府に出した決議でも、同じように求めている。「これまでの対策の延長線上の対応では全く事態の改善が見込まれず、根源的な改革が急務なのは明らか」とあり、危機感がにじむ。

 しかし、いまのところ、中核市の児童相談所の設置の義務化、常勤の弁護士や医師の義務化は、「検討課題」として残されそうな見通しだ。

 役所任せにせず、意味のある対策を進めようするには、様々な壁にぶつかる。予算不足の壁、地方自治の壁、業界の壁などがある。しかし、意見の対立を超えて、政策にまとめ上げるところに、政治家の本領は発揮されるはずだ。

 一方、世間の関心の高まりを受けて、政治が時に前に進むことがある。それを感じたのは、親による体罰の禁止規定の検討だ。今度の改正案には盛り込まれることが検討されている。

 結愛ちゃん、心愛さん、どちらの事件も、父親が「しつけ」と称して、執拗に子どもに暴力を振るっていたと見られている。こうしたことから、「しつけ名目の暴力を法的に禁止するべきだ」との政治的議論につながった。

 潮目が変わったと感じたのは、2月7日に国会内であった超党派の国会議員の会合だった。体罰禁止を法律に明記した海外諸国では、体罰への意識が大幅に変わった、ということが紹介されていた。民法の親権の一つとして「懲戒権」があり、これを削除すべきだという意見も相次いだ。

 「子どもたちの命が危険にさらされている現状を、議会としてどうにかしなければならなない時期にきている」(自民党の自見英子氏)

 「私も5歳の子どもをたたいてしまった。体罰をせずにどう子どもを導けばいいのか、多くの親は迷っている。啓発が大切だ」(自民党の津島淳氏)

 議員の手が次々と上がり、誰もが法改正に踏み込むべきだと語った。半年前に、自民党の会合を取材している時とは雰囲気がまるで違う。当時は、「懲戒権なんて知らなかった」といった意見や、懲戒権削除には慎重な意見も出ていた。

拡大Larisa Lofitskaya/shutterstock.com

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筆者

三輪さち子

三輪さち子(みわ・さちこ) 朝日新聞記者

2006年、朝日新聞社に入る。横浜、徳島総局を経て2011年から政治部。民主党政権では事業仕分け、自民党政権では自民党幹事長番、防衛省などを担当。2017年から世論調査部。オピニオン編集部を兼務。関心のあるテーマは虐待・貧困などの「子どもをめぐる問題と政治」。趣味はカバン作り。

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