2019年03月07日
日韓の政治外交関係は、その後も「最悪」が日々更新されている状態だという。2月の外相会談でも「言った、言わない」の攻防。ここまで信頼関係が崩れるというのは由々しきことなのだろう。日本のワイドショーではコメンテーターの皆さんが、韓国に対してとても怒っているらしく、インターネットにもそれが流れてきて心が痛む。テレビ局がこういう意見を好んでいるのを見ると、同調する視聴者が多いのだろう。日本は過去最高の「嫌韓ムード」なのかもしれない。
しかし、旅行業界ではこれとは真逆の現象が起きている。すでに訪日外国人の中で韓国人がトップなのはよく知られているが、逆も正なり。訪韓も大人気なのである。旅行業界最大手であるJTB総合研究所が、2月12日に更新したデータによれば、昨年12月の日本の海外渡航者の行き先は次のような順位となっている。
国・地域/入国者数/前年度比
韓国/258,521/+33.5%
台湾/200,098/+6.7%
タイ/153,989/+11.4%
ハワイ/131,009/+4.7%
香港/126,195/+15.2%
ここで見る限り、韓国が最大人気国であり、冬休み旅行の定番と言われてきたハワイをダブルスコアで引き離している。さらに注目すべきは前年度比。韓国は33.5%増と他国・地域を大きく引き離している。また、渡航者数だけでなく、ガイドブックを刊行する出版社でも同じような意見が聞かれる。
「韓国、いいですよ。最近は少しずつ若い人が海外旅行に戻りはじめているのですが、そんな若年層には韓国が一番人気です」
ちなみに2018年に約300万人の日本人が渡韓しているが、これは2015年に200万人を割り込んだ時からのV字回復。2015年は韓国国内にMERS(メルス・中東呼吸器症候群)の感染が広がった年で、日本人を含む外国人観光客の多くが韓国旅行をキャンセルした。
渡韓人数と前年比
2015年 1,837,782 -19.4%
2016年 2,297,893 +25.0%
2017年 2,311,447 +0.6%
2018年 2,948,527 +27.6%
翌2016年は朴槿恵大統領の弾劾を求める大規模な市民集会が繰り広げられ、2017年は北朝鮮のミサイル実験が繰り返され、そして2018年には徴用工裁判の最高裁判決が出た。こうして見ると、北朝鮮問題は多少の影響があるとはいえ、日韓関係については政治的対立は観光客の動きにあまり影響を与えなくなっているといえる。「日韓関係は過去最悪」といわれる2018年に、これだけ多くの日本人が韓国に遊びに行っているのだ。
しかも2018年の月別の渡韓人数を見ると面白いことがわかる。平昌五輪が開催された2月は前年比がマイナスだが、その後にプラスに転じている。特に春からが好調で、徴用工判決が出た10月以降も順調に増加している。つまり平昌五輪の成功と、アスリートたちの友情は4月以降の渡韓者数の上昇に影響している可能性がある。逆に10月以降の外交的軋轢は影響がないといえるかもしれない。
前回、「親父同士は喧嘩していても、隣家の子供と遊びたい」と書いたが、意外にもそのとおりの現象だなと思う。昨年の今頃、それまで平昌五輪に悪態ばかりついていた日本の一部メディアを黙らせたのは、スピードスケート500メートルで金メダルの小平奈緒選手と李相花選手の美しきウイニングランだった。平昌オリンピックの成功が潮目になったように思う。
1月 167,083 +7.9%
2月 168,241 -9.1%(平昌五輪)
3月 294,476 +7.3%
4月 213,853 +29.0%
5月 227,230 +42.6%
6月 235,293 +40.2%
7月 230,512 +35.1%
8月 315,025 +38.9%
9月 247,847 +12.7%
10月 290,468 +61.7%(徴用工判決)
11月 299,978 +40.5%
12月 258,521 +33.5%
ところで、この「親父同士」というのは単なる比喩ではない。というのは、
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