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ドナルド・キーンさん拡大ドナルド・キーンさん(1922―2019)

2月19日(火) 県民投票の取材で自民党県連トップだった照屋守之県議のインタビューのため、朝7時40分の便で那覇へ。この時期、なぜか沖縄便がひどく混んでいる。オフシーズンのはずだが修学旅行なのか学生・生徒の団体も多い。いつも泊まるホテルが満杯で、Rディレクターにおさえてもらった九州福岡拠点の私鉄チェーンのビジネスホテルにチェックイン。沖縄のホテルには必ずと言っていいほど、地元新聞、琉球新報と沖縄タイムスが置かれていることが多いのだが、このホテルには産経新聞だけが置かれていて、販売している新聞も読売新聞だけという沖縄ではとても珍しいホテルなのだった。

 13時からのインタビューで、実力派の照屋県議は、「3択案で全県実施」に至った過程について、かなり率直に話してくれた。今回、自民は「自主投票」ということとなったが、ここに至るまでにはかなりの曲折があったようだ。ひとつだけ聞いておきたいことがあった。それは、27歳の元山仁士郎さんが県民投票不参加の5市の動きに抗議してハンガーストライキに入ったことを、照屋議員が当時どう受け止めたか、という点だった。照屋議員は「強くこころを動かされた」と心の内を明かした。そのまま公明党の金城勉県議にも面会を求めて話を聞いたが、彼はカメラでの取材は絶対にダメと頑なだった。「県民投票の環境整備に汗をかいたが、あとは静かに結果を見守りたい」と。この程度のことをなぜカメラの前で言えないのだろうか。ただ、元山さんのハンストについては「からだを張った行動に何も感じないわけがないでしょう」と言っていた。

 東京から、アメリカ在住の町田智浩さんがCSの「ニュースの視点」『現代史に向きあうアメリカ映画』に出演OKとの連絡が来た。来日のスケジュールの合間をぬって21日の朝ならばOKだと。これは話を聞かない手はない。それでいろいろと調整。あしたの最終便でいったん帰京すれば、何とかなる。

 RBC(琉球放送)の報道局に挨拶に行こうと、いつものように裏口から入ろうとしたら、今年1月からセキュリティチェックが厳しくなり、正面玄関で受付を通さなければ原則不可となっていた。若干戸惑う。ヘリでの辺野古空撮などの件を簡単に伝える。

 今日は、確かペンクラブの有志らが、例の官房長官定例記者会見での東京新聞・望月衣塑子記者に対する「取材制限」問題で記者会見が行われていたはずだ。宿舎に戻ってテレビをみるが、タレントの堀ちえみさんの口腔がん公表が大々的に報じられていた。東京の知人に電話をすると「テレビというあなたのいる世界ではさ、望月は堀ちえみに負けるんだよ」と言われた。そうだよな。でもテレビ報道の世界でもそうか? 一人きりになって考えた。さまざまな意味で強い孤絶感を覚えるようなメディア状況が続いている、と。

2月20日(水) 朝早く、名護市辺野古の集落へ。一番取材がむずかしい場所だ。東京あたりから何かの節目のたびにカメラとマイクを抱えて、のこのこやってくる類のメディアに、辺野古の人々が取材に喜んで応じようとは思わないだろう。僕が逆の立場ならばそうだ。それでもできる限りの人々に話を聞いて回った。辺野古では今日も埋め立て工事が間断なく続けられていた。取材予定が立て込んでいるので、今夜、玉城デニー知事の単独でのインタビューを収録することにする。そのための準備がかなり手間取ったが、結果的にうまく運んだ。デニー知事にも同じく元山さんのハンガーストライキ決行時の受け止めを聞いた。最終便で東京に戻る。機内で原稿書き。

2月21日(木) 朝8時からCSのTBSニュース「ニュースの視点」の収録。こんな早朝から町山さんには本当に申し訳ない。とにかくそれほど綿密に打ち合わせをする必要もないだろう。最近のアメリカ映画『フロントランナー』『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』『バイス』の3本を紹介しながら、現代史を扱えない日本映画の現状、そしてメディアのありようについて町山さんと自由に話をした。町山さんとは、2004年ごろかアメリカでマイケル・ムーア監督のインタビューを撮った時にご一緒して以来ではないか。ロスに住んでいるとばかり思っていたら、バークリーだった。全米で最も自由な都市のひとつ。町山さんは自由にものをいう人だ。いいなあ。

 収録終了後にすぐに羽田空港に戻って那覇行きの便に飛び乗る。またしても混んでいた。13時35分那覇着。すぐに宜野湾で取材中のRディレクターと那覇で合流して自民党県連本部前でリポート。辺野古沖のヘリ・リポート、あしたの朝は大丈夫だろうか。心配だ。RBCからの連絡では、朝8時半にヘリポートで打ち合わせ、午前9時に離陸の予定だという。今回の取材でお世話になっているジャンボタクシーの運転手さんが北海道の札幌出身で沖縄に移住してきて8年目の人だった。何とかつて某全国新聞社の同業者だったという。取材で移動中の車の中では、僕らはスタッフとの間で言いたいことを言い合うので、何だか取材の手の内を見られてしまったようで恥ずかしい。期日前投票の伸びがやや鈍いようだ。

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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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