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習近平の白髪のわけ

全人代に出席した国家主席。「頭」になぜか白いモノが…。世界が注目するナゾに迫る

古谷浩一 朝日新聞論説委員(前中国総局長)

悩みが多い? 染め忘れるほど忙しい?

 まずは、一部の香港メディアが伝える「悩みが多く、急に白髪になってしまった」説。確かに米中対立や中国の経済成長率の鈍化など、中国は今、内憂外患。習氏の悩みが多そうなのはその通りだ。

 しかし、これには有力な異論がある。習氏は元々、白髪が多かったが、これまでは白髪染めで黒い髪にしていた、急に白髪が増えたわけではない、という反論だ。

 根拠は、2016年の中国中央テレビの報道。習氏を知る全人代の上海市代表の一人が、その時点で、習氏の頭髪の右側部分に白髪の束があったと明かしていたというのだ。

 過去数年の習氏の写真を詳細に調べてみた。すると、明らかなのは、2012年に共産党トップの総書記に就任したときは真っ黒だったということ。その後、白いモノが少し見える写真が、いくつかあった。確かに白髪を染めていたという言には説得力があるように思う。

 いずれにしろ今回の全人代では、その白さがはっきりした。香港メディアのなかには、中国の学者の話として「仕事が忙しくて髪を染め忘れた」との見方を伝えるところもある。

 しかし、それはどうだろうか。白髪染めも忘れるほど、国家のために誠心誠意に仕事をしているのだというのはどうだろう。否定する材料もないのだが、なんだか習氏をたたえるプロパガンダ臭い感じがする。

拡大全人代の開幕式に臨んだ習近平国家主席=2019年3月5日、北京

 2008年の四川大地震の直後に当時の温家宝首相が被災地入りした際、温氏の髪に少しずつ白いモノが目立ち始めたのが、話題になったことがある。

 白髪を染める時間の余裕がないほど、温氏が忙しかったのだと言われた。このときも宣伝色の強い話だと感じたが、一方で、死者・行方不明者が約9万人に上る大災害の対応を温氏は現地入りしてこなしていた。本当でもまったくおかしくないと多くの中国人が思ったことは事実だ。

 それに比べると、今の習氏は本当に白髪染めもできないほどに忙しいのだろうか。私にはちょっと疑問である。

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筆者

古谷浩一

古谷浩一(ふるや・こういち) 朝日新聞論説委員(前中国総局長)

1966年生まれ、神奈川県出身。1990年、朝日新聞社に入社。前橋支局、大阪本社社会部、東京本社経済部などを経て、上海、北京、瀋陽で特派員に。2012年1月から2013年8月まで東京本社国際報道部次長。2013年9月から2018年1月まで中国総局長。2018年4月から国際社説担当の論説委員。 1993年から1994年まで中国・南京大学、1997年から1998年まで韓国・延世大学でそれぞれ留学研修。

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