メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

強姦罪の審議でおじさん議員が放った有り難いヤジ

元参院議員・円より子が見た面白すぎる政治の世界① 細川護熙氏の“告白”

円より子 元参議院議員、女性のための政治スクール校長

強姦罪の審議をめぐる忘れられない光景

参院本会議で性犯罪を厳罰化する改正刑法が可決、成立した=2017年6月16日拡大参院本会議で性犯罪を厳罰化する改正刑法が可決、成立。議場に向かって頭を下げる金田勝年法相(左下)=2017年6月16日
 一昨年(2017年)、国会議員や司法の世界に一人の女性もいなかった明治時代につくられた刑法の強姦(ごうかん)罪が110年ぶりに改正された。改正の結果、強姦罪の名称は「強制性交罪」に改められ、法定刑の下限が3年から5年に引き上げられたが、とても厳罰化とまでは言えないし、暴行や脅迫要件も残っていて、さらなる見直しは必要ではある。

 とはいえ、望まない性行為は暴力であると考え、それを告発しにくい社会のあり方を変えていきたいと願い、運動していた私にとって、強姦罪改正は長年の念願でもあり、感慨深いものがあった。

 強姦罪をめぐっては、今も鮮明に覚えている光景がある。

 20年以上も前、参院法務委員会で強姦罪を改正すべきだという趣旨の質問をしたときのことだ。強姦の判決がおりなかった判決文に書かれていた「着衣が破れることは行為の中でままあることであって……」という部分を読み上げた私は、続けてこう言った。

 「私、寡聞にしてこの国の裁判官のご家庭内のことなど存じ上げませんが、着衣の破れるような行為をご夫婦でなさっておられるのでしょうか」

 判決文のこの箇所は、「着衣が破れたくらいでは強姦とはいえない」という判決の「キモ」の部分だったので、あえて言及したのだ。

 生命を危険にさらすほどの抵抗をしなければ、和姦とみなされてしまう。着衣が破れるほどの抵抗をしても、そんなことは普通の性行為ではよくあることだと判例はいう。いったい女性はどうすればいいのか。殺されるまで抵抗するべきだというのだろうか。

 私は、加害者ではなく被害者が責められること、暴行・脅迫要件がなければ強姦と認められないこと、強盗罪より強姦罪が軽いことが許せなかった。そんな強姦罪は改めるしかないと強く迫った。

 すると、それまで目をつぶって座っていた自民党の「おじさん議員」たち(彼らの多くは法務大臣経験者だった)が目を開いた。そして、口々にヤジを飛ばしたのである。

「こんな判決文を出しているなんて信じられん」
「円さんの言うとおりだ。強姦の規定を変えろ」
「強姦罪は軽すぎるぞ」

 こういう野次なら大歓迎。時には野次もいいな。そう思った。

女性や子どもに関する課題が見過ごされる理由

 おじさん議員の方々も、強姦罪に問題があることは理解しているのだ。だから気が付けば、反応する。ただ、残念ながら、なかなかそこに目が向かない。

 marekuliasz/shutterstock.com拡大 marekuliasz/shutterstock.com
 政治の世界に入って痛感したのは、国会でも法律でも、女性や子どもの問題が取り上げられることが、あまりに少ないという実態だった。政策策定の基になる統計も、女性や子どもの視点に立つものはほとんどなかった。なぜか?女性議員や女性官僚があまりに少ないからだと私は考える。

 実際、課題は山積していた。たとえば世界の児童ポルノの80%は日本で作られていて、野放しになっていた。また、売春する女性は罰せられるのに、買う側は罰せられないという不均衡を放置しておいていいのか。そこで私は、「売春」ではなく、「買春」と書くよう迫り、児童買春を禁止する法律もつくった。これだって、たやすく通ったわけではない。法律用語に「買春」なる言葉はないと、法務官僚や法制局は頑迷に抵抗した。

 非嫡出子の場合、戸籍の続柄欄の記載に嫡出子と違い、「男」「女」としか記載されていなかった問題も取り上げた。「プライバシー権の侵害」ではないかと追及した結果、2004年に法務大臣が「区別記載をなくす」と表明し、戸籍法施行規則が改正された。それまで社会の常識といわれていたもの、法律だから守るのが当然で済まされていたものの一つひとつを、私は女性の視線で見直し、疑問を抱いた点については粘り強く変えていった。国会議員17年の、ささやかな自負と言っていい。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

円より子

円より子(まどか・よりこ) 元参議院議員、女性のための政治スクール校長

ジャパンタイムズ編集局勤務後、フリージャ―ナリスト、評論家として著書40冊、テレビ・講演で活躍後、1992年日本新党結党に参加。党則にクオータ制採用。「女性のための政治スクール」設立。現在までに100人近い議員を誕生させている。1993年から2010年まで参議院議員。民主党副代表、財政金融委員長等を歴任。盗聴法強行採決時には史上初3時間のフィリバスターを本会議場で行なった。

円より子の記事

もっと見る