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震災8年、3つの視点への疑問

被災地・岩手県大槌町に駐在した記者が警告する風化

東野真和 朝日新聞編集委員

町ができないのは、制度が合わないから

 最近の震災報道で目立つのは、巨額をかけて整備した土地に住む人がいない、という指摘だ。その主原因は、土地区画整理事業という従来からある制度をそのまま適用したことにある。

 道路を太く、まっすぐにしたり街区を整理したりする事業だ。地権者は土地を一定比率供出することになるが、資産価値があがるし、建物を壊すことになるので補償費用が出て、家を新築できるなどのメリットがある。

 津波対策で、国は「多重防災」を基本にした。防潮堤だけでなく、土地をかさ上げすることで浸水を防ごうとした。従来の制度では、区画整理事業なら国費で土地のかさ上げができたから導入されたので、きれいな区画にするのは、むしろ付随的なことだった。

 一方で、区画整理は時間のかかる事業だ。すでに更地になっていたので、建物の解体や一時的な立ち退きをする手間はないが、一筆一筆、地権者に承諾を取って土地の線引きをし直す。それが何千筆とある。

 本来なら何十年もかけて行う事業だ。多くの人員を投入して異例の速さで進めたが、どの被災地も区画が決まるまで2、3年はかかった。

 そこから広大な土地に盛り土をする工事を始めると、盛り土が終わって地権者が住宅を建ててよくなるまでには、5年以上の歳月が流れる。その頃には、別の場所での生活から戻らないと決めた人が増えていた。より安全になったとはいえ、津波への恐怖から、元に戻らなかった人もいる。

 もともと空き家だった場所もある。アパートが津波で流されたが、新築しても部屋が埋まらないだろうと、再建しない家主も多い……。そんな様々な理由が重なって、更地が広がる結果となったのだ。

 最初から利用計画のある土地の地権者だけを集めてその分の面積を確保し、かさ上げすればこうはならなかったが、区画整理はそんな手法ではない。

 かと言って、「税金の無駄だから、次の津波からは好き勝手に再建してもらおう」というわけにはいかない。

 前出の戸羽・陸前高田市長も、膨大な土地区画整理制度の手続きに悩まされた。「東日本大震災で行われたハード事業を全般的に検証し、今後起きるかもしれない震災からの復興に備えて、柔軟に対応できるしくみを整えておくべきだ」と語る。また、被災が予想される自治体では、地域別の復興計画をあらかじめ作っておくべきだろう。

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筆者

東野真和

東野真和(ひがしの・まさかず) 朝日新聞編集委員

1964年生まれ。社会部、政治部、編集センター、特別報道センターなどを経て、東日本大震災後に岩手県大槌町で3年間、熊本地震後に熊本県南阿蘇村で2年間、それぞれ民家に下宿。現在も震災復興・地方自治の編集委員として取材を続ける。著書に「駐在記者発 大槌町 震災からの365日」(岩波書店)、「理念なき復興」(明石書店)など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです