田中均氏が語る「平成」という時代
ポピュリズムが台頭し、プロフェッショナリズムは色あせた。自己主張外交の行方は…
田中均 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

田中均・国際戦略研究所理事長
平成は終わりを告げるが、平成の30年間は日本の外交にとり、どういう時代だったのだろうか。
第二次世界大戦後の米ソ冷戦構造の中で、日本も米国の同盟国としての外交を展開してきた。平成元年に冷戦が終了してからの30年で国際構造は大きく変化し、日本の政治構造も変化した。日本の外交はどういう影響を受けたのか。それを論じることは、新しい時代の外交課題への取り組みを考えるうえでも、とても重要である。
「歴史の終わり」ではなかった
米国の政治学者フランシス・フクヤマ氏は、冷戦の終わりは民主主義と自由主義経済が統治体制として最終的に勝利したことを意味すると論じた。
しかし現実には、歴史は終わらなかった。グローバリゼーションは先進民主主義諸国と新興国の国力格差を縮め、一方、超大国であり続けた米国も湾岸戦争、テロとの闘い、そしてイラク戦争などの幾度にもわたる中東での戦争で疲弊し、内向きの度合いを強めていった。
世界のいたる地域で民主主義体制はポピュリズムの挑戦を受けている。欧州におけるBREXITや反EUを掲げるポピュリスト政党の台頭、米国でのトランプ政権の誕生などは従来のリベラルな統治体制を蝕んでいる。
そして米中の貿易戦争、とりわけハイテクを巡る覇権争いに象徴されるように、国家の指導の下で資源配分を行い、産業政策を進める国家資本主義と、自由競争を基本とする自由主義経済の対立は容易に解消されることはない。
さらに、トランプ政権下での「アメリカ・ファースト」の考え方は米国の国際社会での指導力を著しく損なっており、米国の求心力も大きく低下している。
冷戦終了から今日に至る国際構造の本質的な変化に日本はどういう影響を受けてきたのだろうか。