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米朝関係悪化の一因?情報機関が注目するある事件

スペインの北朝鮮大使館襲撃事件で取りざたされるCIAの関与 

高橋 浩祐 国際ジャーナリスト

地元の新聞・ネットが報じた「CIAが関与か」

マドリード郊外にある北朝鮮大使館の入り口(中央)。門には監視カメラが設置されていた=2019年3月1日拡大マドリード郊外にある北朝鮮大使館の入り口(中央)。門には監視カメラが設置されていた=2019年3月1日
 スペインのエルパイス紙とネットニュースサイト「エル・コンフィデンシアル」はともに、捜査当局のスペイン警察とスペイン国家情報局(CNI)が、今回の事件にはアメリカ中央情報局(CIA)が関与していると判断したことを報じた。

 特に、エルパイス紙は、捜査当局が大使館内や付近に設置していた防犯カメラの映像から、武装集団10人のうち少なくとも2人がCIAとつながりがある人物と突き止めたと報道。その10人の大部分が韓国人であることが判明した、と伝えた。エル・コンフィデンシアルも、犯行グループにアメリカの諜報機関に特有の手口があるとCNIが見ていることを報じている。

 また、スペインのエル・ペリオディコ紙は、捜査当局の見方として、犯行グループが外国政府の工作員ではなく、外国情報機関に雇われた「雇い兵たち」だったと報道した。そして、その一環として、エルパイス紙が報じたように、うち2人がCIAとつながりを持つ人物だった可能性を指摘している。また、これとは別に、CIAとも密接な関係を持つ、韓国の国家情報院(NIS)に雇われた者であった可能性にも言及している。

 スペイン捜査当局から説明を求められたCIAは関与を否定。しかし、スペイン捜査当局にとって、その説明は「納得のいかないもの」だったという。スペインの韓国大使館も事件後、韓国政府の事件への関与を否定した。

透けて見えるプロの手口

 アメリカであれ、韓国であれ、どこの国であっても、国の情報機関が関与するケースでは、通常の工作活動なら足が付かないように、外部の「傭兵」を使うことが多い。

 近年では、マレーシアで金正男氏が毒殺された際、ベトナムとインドネシアの女性が「現場の駒」として使われたケースがある。そして、かりに今回、CIAとつながりのある外部の工作員が関与したとしても、CIAがそれを認めることは100%あり得ない。知らぬ存ぜぬの姿勢を貫くだろう。

 いずれにせよ、スペインの捜査当局は、今回の事件が事前に用意周到に準備された、計画性の高い犯行だったと判断している。あたかも軍部隊のように行動し、プロ集団によるオペレーションだったとする。事件発生時には大使館外で変圧器の火災も起きており、犯行グループが大使館への侵入のために意図的に行ったものとの見方も出ている。

 さらに、エルムンド紙によると、犯行の数日前には、大使館内でパーティーが開催されていた。事件当日は、北朝鮮の建築学生の一団がゲストとして招かれていたと言い、大使館員も油断していたかもしれない。犯行グループは、事前に大使館について十分に調べ、平日の午後という誰もが思いつかないような時間帯に意表をつく格好で奇襲を決行した。

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筆者

高橋 浩祐

高橋 浩祐(たかはし・こうすけ) 国際ジャーナリスト

英国の軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員。1993年3月慶応大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務める。

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