北朝鮮支援の原点となったインドシナ3国での体験
北朝鮮で人道支援25年。「KOREAこどもキャンペーン」の歩みをたどる(1)
熊岡路矢 日本国際ボランティアセンター顧問 KOREAこどもキャンペーン元代表

新潟港から出港前、北朝鮮の水害支援についての記者会見にのぞむ農協青年部など5団体代表=1996年8月(日本国際ボランティアセンター提供)
合意がなかった2度目の米朝首脳会談
トランプ米大統領と金正恩・朝鮮労働党委員長による米朝首脳会談が2019年2月27、28の両日、ベトナムの首都ハノイで再開された。
今回の首脳会談は、昨年6月にシンガポールで行われた史上初の米朝首脳会談ほどの驚きとインパクトはないものの、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の非核化が進められるか、いまも続く朝鮮戦争の「休戦」状態から平和協定合意を通した恒久的な和平に変えられるかが、世界の関心を集めた。
北朝鮮は、経済制裁の解除を求めていた。事前準備会合では、合意事項、調印式まで用意されていたようであるが、結果として、正式に合意されたものはまったくないまま、会談は終わった。
安易な妥協を止めたコーエン被告の公聴会

米朝首脳会談が事実上、決裂した後、ハノイのホテルで記者会見に臨んだトランプ米大統領(壇上左)とポンペオ国務長官(同右)=2019年2月28日
その理由のひとつは、2016年大統領選挙時における、トランプ氏とその支持母体幹部によるロシアとの「連携」疑惑が高まったことにある。
2月27日には、トランプ大統領の元弁護士マイケル・コーエン被告の下院での公聴会が全米で中継され、ロシア疑惑不正以外の嘘も明らかにされたことが注目を浴びた。
これは偶然ではない。下院議長のペロシ氏(民主党)が意図的にぶつけた日程であった。
再選を目指すトランプ氏には、北朝鮮との交渉において、派手な「成果」を求めて安易な妥協をするのではないかという不安がつきまとっていた。だが、公聴会で世論のなかにトランプ氏へ厳しい見方が形成されたことは、結果としてトランプに安易な妥協をさせない方向に働いた。北朝鮮、イラン、イラク(サダム・フセイン時代の)にきわめて批判的なボルトン・国家安全保障問題担当大統領補佐官が会議に参加していたことも、この「ゼロ」合意に影響を与えたに違いない。
今回の米朝会談の合意ゼロは非常に残念であるが、かつてインドシナや他地域での和平協定も締結までに何年もかかり、何回もの会議を必要とした。ともあれ北朝鮮をめぐり、当面の戦争の危険のない状態は継続している。米朝以外のアクターも含む、今後の様々な会合に期待したい。