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北朝鮮支援の原点となったインドシナ3国での体験

北朝鮮で人道支援25年。「KOREAこどもキャンペーン」の歩みをたどる(1)

熊岡路矢 日本国際ボランティアセンター顧問 KOREAこどもキャンペーン元代表

NGO活動者の「糧」となった社会主義国での体験

ハイフォン市中心部の公会堂前を自転車が行き交う=1990年7月(日本国際ボランティアセンター提供)拡大ベトナム・ハイフォン市中心部の公会堂前を自転車が行き交う=1990年7月(日本国際ボランティアセンター提供)
 1954年以降、分断国家であったベトナムは、南ベトナムを支援する米国の激しい空爆とその後の和平交渉の結果、1975年4月の北ベトナム勝利、翌1976年の総選挙を経て、南北統一にいたる。1986年8月にレ・ズアン(統一後のベトナム共産党初代書記長)が死去した後、12月の第6回ベトナム共産党大会では、左遷されていたグエン・ヴァン・リンが書記長に選出され、米中、西欧、日本などとの関係改善を目指す全方位外交、市場経済導入を軸にする政策が採択された。

 政策の効果が実際に全国に広がるには、5~10年近い年月がかかった。私がベトナムに出入りするようになったのは、そんな頃であった。ソ連一辺倒のレ・ズアンが亡くなった日のハノイの蒸し暑さ、悲しむ人が少なかった街の様子を、いまも鮮明に記憶している。

 いま思えば、親ソ連の社会主義時代、ベトナムの言い方でいえば、「ドイモイ(刷新)」政策以前の時代をベトナムやカンボジアで体験できたことは、NGO活動者としての私にとって大きな糧となった。

アメリカがベトナムに求めた条件

 米越和平協定で明記された「南北の二体制維持」が覆され、統一がなされたことに怒ったアメリカは当初、「ベトナム叩き」に終始していた。しかし、冷戦の終焉(しゅうえん)が見えてきた1980年代後半、特に「第2回国連インドシナ難民国際会議」(1989年、ジュネーブ)で示されたように、国際社会が「難民支援から難民流出国の復興」に力点を置くようになると、アメリカもベトナムとの関係修復を模索するようになる。

UNHCRの自主帰還プログラムでベトナム・ハイフォン市に帰郷した香港からのベトナム帰還民=1991年11月(日本国際ボランティアセンター提供)拡大UNHCRの自主帰還プログラムでベトナム・ハイフォン市に帰郷した香港からのベトナム帰還民=1991年11月(日本国際ボランティアセンター提供)
 アメリカがインドシナの和平、関係正常化の条件としてベトナムにつきつけた条件は、主に①行方不明米兵(MIA)の調査。遺骨の確認と返還②軍事的には、カンボジア侵攻ベトナム軍の撤退③再教育(矯正)キャンプの廃止、拘留者の解放(人権問題)――の三つだった。

 ベトナム側は、ドイモイ政策に基づき、まず①について協力し、②に関しては、1989年9月のカンボジアからのベトナム軍撤退で応え、③の再教育キャンプの廃止も段階的に実現していった。

 この三つの条件をみて想起するのは、1990年代に進行した米朝会議である。

 後述するが、クリントン政権下で成立した「米朝枠組み合意」は、①行方不明米兵(MIA)の調査。遺骨の確認と返還②軍事的には、核開発、ミサイル開発の停止・凍結――を関係正常化の前提条件としてきた。北朝鮮は、①にはすぐ応じ、②に関しては、現在なお協議中である。トランプ政権は、当初、核・ミサイル開発の即時停止を主張してきたが、現在は「段階的に、ゆっくりでも良い」と発言を変化させている。

 もっと言えば、アメリカの現政権は、ベトナムへの対応の際には取り上げた③再教育(矯正)キャンプの廃止、いわゆる強制収容所等の問題に象徴される人権問題について、北朝鮮に対しては強く要求していない。韓国の現文在寅政権もまた、人権問題については、現段階で強く求めていく立場はとっていない。次の段階での目標にしているのだろうか。

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筆者

熊岡路矢

熊岡路矢(くまおか・みちや) 日本国際ボランティアセンター顧問 KOREAこどもキャンペーン元代表

1947年生まれ。1980年、インドシナ(カンボジア、ラオス、ベトナム)難民救援活動を始め、日本国際ボランティアセンター(JVC)の創設に参加。JVCでは、カンボジア代表、ベトナム代表、代表理事などをつとめ、2007年から現職。北朝鮮にはコメ支援以後、10回ほど訪問。東南アジアでの難民・緊急支援・開発活動、南アフリカ、エチオピア、パレスチナなどでの短期の人道支援にも従事する。東京大学大学院総合文化研究科「人間の安全保障」客員教授、UNHCR駐日事務所アドバイザー、朝日新聞紙面審議委員などを歴任。『カンボジア最前線』(1993 岩波新書)、『戦争の現場で考えた空爆、占領、難民―カンボジア、ベトナムからイラクまで』(2014 彩流社)など著書多数。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです