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移民当事者だから見える多様化後進国・日本の実情

4月にスタートする外国人労働者の受け入れ拡大は前途多難

T.W.カン 国際経営コンサルタント グローバル・シナージー・アソシエツ代表

後手にまわる改正入管法への対応

 興味深いのは、「移民の国」アメリカが、外国から来る人をめぐり大揺れなとき、移民の経験が少ない日本は、外国から多くの人を受け入れようとしていることだ。

外国人労働者の新たな在留資格について説明を受ける静岡県内の事業者ら=2019年2月25日、静岡市拡大外国人労働者の新たな在留資格について説明を受ける静岡県内の事業者ら=2019年2月25日、静岡市
 具体的には、昨年暮れに成立した改正出入国管理法に基づき、4月からスタートする外国人労働者の受け入れ拡大に向け、さまざまな準備が進められている。ただ、今後5年間に最大約34万人の外国人を受け入れるという日本の労働政策の歴史的な大転換にもかかわらず、対応は後手に回り、社会にどんな影響がでるか、依然として不透明である。

 私事で恐縮だが、私の父は朝鮮戦争の最中、文字どおり一文無しで日本に渡来し、最初は単純労働で生き延び、後に国際貿易業を営んで、妻と子どもの5人家族を養った。その一人である私は日本で育った後、アメリカに留学し、マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバードで学位を取ることができた。

 その後、私は大手半導体メーカー・インテルの本社と日本支社で幹部をつとめたが、日本支社では同じ職場にいる外国人と日本人が引き起こす摩擦に悩まされた。日本の大手上場企業の社外取締役も経験したが、その際には日本企業が異文化と遭遇した場合の摩擦の現場を目の当たりにした。

 こうした経験からすると、外国からの移民に長く警戒心を抱き続けてきた日本の社会が、大量の外国人を急ピッチで受け入れられるか疑問を禁じ得ない。本稿では、そうした立場から、外国人労働者問題について考察を加えてみたい。

目指す国が明確でない日本

 ある日本の入管局長経験者によれば、出入国管理法(入管法)とは、国のあり方を決める大切な法だという。そして、日本は今、中国の台頭を前に、いかなる国を目指すかの岐路にあるのではなかろうか。

 司馬遼太郎氏がかつて示唆したように、中国が台頭した時代には周辺国は試練を迎えるという。換言すれば、日本を含む中国の周辺国は、中国に対抗するか、中国に呑み込まれるか、いずれかの選択を迫られるという局面にあると考えることもできるのではないか。

 私は、明治維新を経ていち早く先進国の仲間入りをした日本は、中国に劣らぬ魅力的な国になることを望んでいる。しかし、今回の入管法改正をめぐる対応を見ると、外国人労働者受け入れの数値目標を掲げ、法とインフラ整備に努めるだけで、いかなる国を目指すかが明確ではない。このままだと、入管法改正後の日本は魅力的な国になれないどころか、社会そのものが混乱に陥るリスクさえある。

 どこが問題なのか。さらに詳しく述べることにしよう。

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筆者

T.W.カン

T.W.カン 国際経営コンサルタント グローバル・シナージー・アソシエツ代表

1957年生まれ。日本の一部上場企業を含む日米中企業の社外取締役を歴任。トップ半導体メーカー、インテルの本社では戦略、製品企画、マーケテイング分野で活躍、インテル・ジャパンではシステム本部長を勤めた。東京で移民の家庭に生まれ育つ。高等教育をアメリカのMITとハーバード・ビジネス・スクールで受ける。すなわち日米両国で移民としての定住経験を持つ。異文化比較や国際戦略に関する著書を英語、日本語、韓国語で出版。NHK、CNN、KBSにコメンテーターとして出演。JETRO(日本貿易振興機構)の外国派遣事業に有識者として協力、ロシア、中央アジア、インドなどを歴訪し、理事長感謝状を受ける。日本外国人特派員協会会員。