メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

移民当事者だから見える多様化後進国・日本の実情

4月にスタートする外国人労働者の受け入れ拡大は前途多難

T.W.カン 国際経営コンサルタント グローバル・シナージー・アソシエツ代表

日韓の成功者が少ないシリコンバレー

シリコンバレー・マッピング( zimmytws/shutterstock.com)拡大シリコンバレー・マッピング( zimmytws/shutterstock.com)
 アメリカのシリコンバレー、かつて半導体メーカーがひしめいていたことからそうした名前になったこの地で今、目に付くのは、インド人や中国人だ。集積回路の略である「IC」は、インド人、中国人の頭文字と言われるほどである。これに対し、日本人や韓国人の成功者は少ない。

 いろいろな理由が考えられるが、私が特に問題だと感じるのは、日本や韓国が多民族社会が抱える問題にもまれていない点だ。

 言うまでもなく、インドと中国は自国内で多民族社会の現実に向き合わざるを得ない。シリコンバレーに集まるベンチャーには、アメリカ国内市場に焦点を絞り、ローカルなビジネスを営もうとする発想はほとんどない。あるのは、普遍的な価値を世界市場に向けて投入しようとする発想である。先述のGAFAもしかり。そして、こうした発想は、異民族の存在を軽視するような国では生まれにくい。

 日本は技術立国といわれるが、裾野はけっして広くない。素材、部品そして自動車などの分野において、世界規模で頭角を現していることは間違いないが、技術的なソリューションを牛耳るプラットフォームやシステム設計については、弱いと言わざるを得ない。

 要するに、ガラパゴス的、すなわち自国重視の環境から湧く発想からは、世界の仕組みに影響力を与えることは極めて困難なのである。GAFAで、多様な国籍の社員が自国の「当たり前」や「常識」を問い直し、新たなビジネスモデルを創造しているのを見るにつけ、その思いを強くする。

 「多様化後進国」の日本と韓国

FreshStock/shutterstock.com拡大FreshStock/shutterstock.com
 経済先進国(たとえばOECDやG20加盟国)の中で、単一民族意識が支配的な国は日本と韓国ぐらいである。日韓関係がうまくいかない根本要因は、歴史問題というより、お互いの単一民族意識にあるのでは、というのが私の持論だが、この議論は別の機会に展開したい。

 入管法の改正を受け、日本では最近、たとえば台湾やシンガポールの政策や状況との比較をときどき目にするが、台湾は少数民族を認めており、シンガポールはその民族構成から必然的に多様性を尊重する政策を取らざるを得ない。「移民の国」アメリカはもとより、こうした国々と比べても、日本や韓国は「多様化後進国」と呼んでも過言ではあるまい。

 具体的に述べよう。アメリカの小学校では、近くに住む移民体験者に移民の動機や体験を“取材”し、教室でそれを発表するという宿題を出す。こうした学びを経て、子どもの頃から移民の視点から物事を見る訓練をする。別な言い方をすると、複眼的な能力を身に付けるのである。日本や韓国でこうした宿題を出している学校が、はたしてどれくらいあるだろうか。

 単一民族的な国の場合、中長期的な人口減少や労働力不足の問題を是正するため、受け入れ体制などの「質的」な課題を充分考えず、「量的」な数合わせのために外国人を呼び込むと、間違いなく問題が生じるであろう。法やインフラの整備は必要条件だとしても、それだけでは充分ではない。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

T.W.カン

T.W.カン 国際経営コンサルタント グローバル・シナージー・アソシエツ代表

1957年生まれ。日本の一部上場企業を含む日米中企業の社外取締役を歴任。トップ半導体メーカー、インテルの本社では戦略、製品企画、マーケテイング分野で活躍、インテル・ジャパンではシステム本部長を勤めた。東京で移民の家庭に生まれ育つ。高等教育をアメリカのMITとハーバード・ビジネス・スクールで受ける。すなわち日米両国で移民としての定住経験を持つ。異文化比較や国際戦略に関する著書を英語、日本語、韓国語で出版。NHK、CNN、KBSにコメンテーターとして出演。JETRO(日本貿易振興機構)の外国派遣事業に有識者として協力、ロシア、中央アジア、インドなどを歴訪し、理事長感謝状を受ける。日本外国人特派員協会会員。