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黄色いベストとブラック・ブロックの危険な関係

暴力至上主義者との共同戦線で暴動化。「パリ炎上」で支持を失うパリのデモ

山口 昌子 在フランス・ジャーナリスト

極右・極左政党の支持で「政治化」が顕在化

 「政治化」は極右政党「国民連合」(RN、旧国民戦線=FN)党首のマリーヌ・ルペンや極左政党「服従しないフランス」のリーダーであるジャンリュック・メランションが「黄色いベスト」への支持を早々に表明したことで顕在化した。当初、国民の支持率が約70%と高かった「黄色いベスト」を5月の欧州議会選挙(比例代表制)に利用しようとした意図は明白だ。

 さらに、「黄色いベスト」の男性リーダーの1人が、イタリアのポピュリスト政党「五つ星運動」の人気議員ディマイオと密かに会っていたことも判明した。しかも、サルビニ伊内相(ナショナリスト政党「同盟」党首)が同議員の「黄色いベスト」支持を歓迎して支持したことから、駐ローマのフランス大使が一時、本国に召還されるなど、フランスとイタリアの関係も悪化した。

 こうした「政治化」への反発、嫌悪感を決定的にしたのが、「黄色いベスト」の参加者の一部に「反ユダヤ主義者」がいたことだ。

 パリ市内で2月中旬、ユダヤ系哲学者アラン・フィンケルクロートと遭遇したデモ参加者の一人が、「汚いユダヤ人!」などの差別用語で罵倒し、この衝撃的シーンがインターネットで大々的に流布された。「反ユダヤ主義」はナチ占領の経験があるフランスでは刑法で厳罰に処せられる。哲学者が告訴を見送ったので刑事事件に発展しなかったが、マクロン大統領が「反ユダヤ主義」に関する新たな強化法案の提出を公約するなど本格的な政治事件に発展した。

brushpiquetr/shutterstock.com拡大brushpiquetr/shutterstock.com

暴力至上主義の「ブラック・ブロック」

 ところで3月16日、世界中に流れた「パリ炎上」のシーンをよく見ると、建物に突撃し、鉄棒などで窓ガラスなどを叩き割り、ドアを蹴破り、火を放ったのは、上から下まで黒装束に黒いヘルメット、黒い覆面で身を固めた集団である。その数、約1500人。大規模デモがあるたびに、パリ郊外などからやってくる暴力集団「キャサール(破壊屋)」とは雰囲気がまったく異なる。「キャサール」が単なるウサ晴らしが主たる目的である場合が多いのに対し、彼らの襲撃標的からは、明確な意図が読み取れる。

 その黒づくめの服装から、「ブラック・ブロック」と呼ばれる集団は、「極左集団」や「極右集団」、「アナーキスト」、「反グローバル化集団」、「反資本主義者」など様々に定義されているが、「暴力のみが自分たちの主張を通すことができる唯一の手段」とする、いわば「」だ。

 個人の参加が基本で、組織らしい組織もなく、全体を率いるリーダーもいないというところは、「黄色いベスト」と奇妙な一致点がある。だが、標的は明確で、「国家の象徴(警察、裁判所などの司法関係、行政府)」や「資本主義の象徴(銀行、大企業、高級レストラン、高級ブティックなど)」だ。

 起源は80年代初頭、東独で秘密警察に対抗するために生まれたとされるが、一般的に知られようになったのは、1991年の湾岸戦争の頃である。アメリカで「戦争反対」のデモを派手に展開した。ただし、この時はデモの性格上、「非暴力」だった。

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筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在フランス・ジャーナリスト

産経新聞パリ支局長を1990年から2011年までつとめる。著書に『ドゴールのいるフランス』(河出書房新社)、『フランス人の不思議な頭の中』(KADOKAWA)、『原発大国フランスからの警告』(ワニブックスPLUS新書)、『フランス流テロとの戦い方』(ワニブックスPLUS新書)、『ココ・シャネルの真実』(講談社+α新書)、『パリの福澤諭吉』(中央公論新社)など。ボーン・上田記念国際記者賞、レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受賞。

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