山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授
1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
島の多くを占める米軍基地。歴史、発展の過程が沖縄と似ているグアムは今……
海岸と並行に伸びた、広いアスファルトの道路が、垂直に降り注ぐ太陽光で白く輝いている。アメリカのグアム島は、兵庫県淡路島とほぼ同じ大きさ。沖縄県の約4分の1の面積しかない。車を飛ばせば2、3時間で、青と白のコントラストが美しい海を横目に、島をふちどる舗装された道路を一周できる。
グアムでの運転は国際ライセンスがいらないが、左ハンドル・右通行なので、レンタカーを借りる日本人は多くない。プライベートビーチつきのホテルとショッピングモールが集中する、中部のタモン地区で過ごす日本人を尻目に、自撮り棒を持って南部へドライブにくり出すのは、自国も左ハンドルの韓国人だ。
左ハンドルの国でも、中国の観光客はあまり見かけない。安全保障上の理由から、米政府が、入国する中国人の数を規制しているのだという。というのも、グアムにはアンダーソン米空軍基地とアプラ米海軍基地があるからだ。小さな島の主要部分を網羅する舗装道路は、実のところ、観光客のためのものではない。グアム島の約3割を占拠する米軍が、島内移動のためにつくったのである。
同じく沖縄の主要道路もまた、米軍がつくったものだ。沖縄戦で本島に上陸した米軍は、日本軍の飛行場を次々と制圧。嘉手納米空軍飛行場などの米軍基地として整備・拡張すると、基地と基地をつなぐ「軍道1号線」を建設する。那覇から始まって沖縄本島を南北に通る、現在の国道58号線である。
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