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沖縄の海兵隊の移転先グアムで起きている本当の事

島の多くを占める米軍基地。歴史、発展の過程が沖縄と似ているグアムは今……

山本章子 琉球大学准教授

在沖海兵隊のグアム移転に高まった批判

米軍ヘリが墜落した直後の沖縄国際大学=2004年8月14日、沖縄県宜野湾市拡大米軍ヘリが墜落した直後の沖縄国際大学=2004年8月14日、沖縄県宜野湾市
 日米両政府は2006年、普天間米海兵隊飛行場(沖縄県宜野湾市)の辺野古沿岸(名護市)への移設完了を条件に、在沖海兵隊の司令部要員、約8000名と、その家族、約9000名のグアム移転に合意した。2004年8月、普天間飛行場と隣り合う沖縄国際大学に、イラク戦争への出撃訓練中の米軍ヘリが墜落・炎上する事故が発生。沖縄県の抗議を受けた小泉純一郎内閣が、アメリカに対して「沖縄の負担軽減」を求めたことに伴う措置だ。

 チャモロ人の若者たちが、一方的に決められた日米合意に怒りの声を上げた。海兵隊用に新規接収予定の軍用地に、自然保護区内のチャモロ人の文化遺跡も含まれていたのだ。グアムの人口の約一割にも相当する海兵隊関係者が移り住めば、ただでさえ脆弱(ぜいじゃく)な島内の水道と電気がもたないという危惧も加わり、現地の批判は高まった。

 米議会も、移転費用の約6割を日本政府が負担するという、この日米合意を信用しなかった。2008年にリーマンショックが起きると、議会はバラク・オバマ政権(2009~16年)に対して、軍事予算の削減を求める。そして、在沖海兵隊のグアム移転で米側が負担する、軍用地の接収費用や水道などのインフラ整備費用が、実際には米軍の見積もりの倍以上になる恐れがあるとして、議会は関連予算を凍結した。

 さらに米環境保護庁も、海兵隊移転がグアムで引き起こす深刻な環境破壊を懸念し、計画の修正を要求した。

 ただ、議会や環境保護庁のこうした判断は、現地の民意がもたらした結果とはいいきれない。グアムは州ではない「未編入領土」であり、米大統領選挙の投票権や下院選出議員の議決権が認められておらず、政治的な配慮をする必要は必ずしもないからだ。あくまで予算管理や環境保護などの職務に沿ったものともいえる。

移転計画の内容が変更

 米議会の予算凍結措置に直面して、民主党の野田佳彦内閣のもとで、2012年に新たな日米合意が結ばれる。その結果、辺野古移設の進展にかかわらず、在沖海兵隊の戦闘部隊、約4000人をグアムに、その他5000人と家族を米領ハワイ州やオーストラリア、東南アジアに分散するという内容に変わった。グアムに来る海兵隊は、当初合意の約4分の1に減り、海兵隊基地は新たに土地を接収するのではなく、アンダーソン空軍基地の中につくられることになった。

 安全保障を専門とする齊藤孝祐氏の研究によれば、辺野古移設と在沖海兵隊のグアム移転が切り離された理由の一つは、中国の台頭や北朝鮮の指導者交代によって、グアムの米軍基地強化が急がれたこと。もう一つは、米議会が

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筆者

山本章子

山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授

1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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