メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

透析中止を考える(上)現在の枠組みにおける検討

福生病院が腎臓病患者の女性の人工透析治療を中止し、女性が死亡した事案を検証する

田中美穂、児⽟聡

現時点の枠組みにおける検討

意思決定プロセスを重視した学会提言

 ここで、日本透析医学会が公表している透析治療の開始・継続に関するガイドライン「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」(以下、学会提言)の内容を確認しよう。

 学会提言によると、透析治療の非開始・継続中止を検討する状況には、1) 透析治療を行うことや継続することが困難で、患者の生命を著しく損なう可能性が高い場合、2) 全身状態が極めて不良であり、かつ、患者本人が意思表示をしているあるいは家族が患者の意思を推定できる場合、がある(表1)。つまり、透析によってかえって命が脅かされたり、疾患の終末期であったりする場合、非開始・継続中止が検討されるということだ。

表1 「維持血液透析の見合わせ」について検討する状態
1. 維持血液透析を安全に施行することが困難であり、患者の生命を著しく損なう危険性が高い場合
① 生命維持が極めて困難な循環・呼吸状態などの多臓器不全や持続低血圧など、維持血液透析実施がかえって生命に危険な病態が存在
② 維持血液透析実施のたびに、器具による抑制および薬物による鎮静をしなければ、バスキュラーアクセスと透析回路を維持して安全に体外循環を実施できない
2. 患者の全身状態が極めて不良であり、かつ「維持血液透析の見合わせ」に関して患者自身の意思が明示されている場合、または、家族が患者の意思を推定できる場合
① 脳血管障害や頭部外傷の後遺症など、重篤な脳機能障害のために維持血液透析や療養生活に必要な理解が困難な状態
② 悪性腫瘍などの完治不能な悪性疾患を合併しており、死が確実にせまっている状態
③ 経口摂取が不能で、人工的水分栄養補給によって生命を維持する状態を脱することが長期的に難しい状態
日本透析医学会血液透析療法ガイドライン作成ワーキンググループ 透析非導入と継続中止を検討するサブグループ. 維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言. 透析会誌. 2014; 47(5): 269-285 (Webへのアクセスは2019年3月12日)

 学会提言は、判断能力のある患者の意思決定は尊重されるとし、家族もその決定に同意していることが望ましいとした。判断能力のない患者については、家族が患者の意思を推定しその決定を尊重することや、家族として意思決定できない場合には医療チームが支援し、医療チームと家族によって合意形成を図るとした。

 だが、患者・家族・医療チームで話し合いをしても合意に至らない場合には、病院倫理委員会など複数の専門家で構成される委員会を設置して助言を得ることが求められる。さらに、いったん透析治療を見合わせても患者が決定内容を変更したり患者の全身状態が改善したりするなど状況に応じて開始・再開することや、治療を見合わせた後に医療チームが効果的な緩和ケアを提供することも提言している。

 上記の合意形成のプロセスに関する記述は、2007年に厚生労働省が策定した「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」(現在の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」, 以下プロセスガイドライン)を踏まえた内容となっている。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


関連記事