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[129]2019年の江戸アケミ

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

『ブラック・クランズマン』映画『ブラック・クランズマン』の公式サイトより

3月12日(火) 午前中「報道特集」の定例会議。会社組織の社会では人事異動の季節なのだ。「報道特集」も例外ではない。社員だけでなく、ADさんも代わっていく。何だかなあ。さみしいなあ。彼ら彼女らは何かを得て巣立っていっただろうか。

 午後4時から参議院議員会館で急きょカルロス・ゴーン日産前会長「人質司法」問題に関するレクチュア。突然メールでお誘いが来た。その同時刻、横浜の日産本社では、ルノー・日産・三菱のトップの共同記者会見が行われている。議員会館の方に顔を出してみることにした。郷原信郎弁護士がいた。もう少し参加者がいるのかと思いきや人数は少ない。何とそこにゴーン氏のキャロル夫人がいて郷原弁護士の話を聞いていた。夫人の所に行って挨拶をしたが、質問には一切ノーコメントということ。調査案件のプレビュー。夕刻、Tらと会食。

3月13日(水) 調査案件のプレビューと資料精読。スパイク・リー監督の『ブラック・クランズマン』をみる。白人至上主義者の団体KKKへの潜入捜査をした黒人警官の話。おそらく1960年代に設定されたストーリーだが、何の、何の、この映画はトランプのアメリカを撃っている。最後のパートでは、僕自身も「現場」に取材に行ってきたので、胸が詰まった。

 夕刻から神保町で打ち合わせ。ベネズエラ情勢に関するメディア報道など。その後Dさん。

ピエール瀧の報道ぶりが気にかかる

3月14日(木) 早起きして、およそ2か月ぶりにプールで泳いだ。肋骨骨折のため、泳ぐどころではなかったのだが、いつもの半分くらいゆっくりと泳いだ。これだけで随分楽になった。ストレスもやわらいだかな。

 表参道のシアター・イメージフォーラムに向かう。映画『金子文子と朴烈(パクヨル)』の主演女優チェ・ヒソさんの舞台挨拶取材とインタビューのため。客席は平日の午後なのに満員だった。この映画についてはすでに書いたが、おそろしいほどパワフルな映画だ。チェ・ヒソさんは舞台挨拶の最後で感極まって涙を流していた。彼女は、金子文子の手記『何が私をこうさせたか――獄中手記』は100年前からの自分たちへのギフトだと言っていた。公判記録を5回くらい読んだそうだ。チェ・ヒソさんは、日本(大阪)とアメリカ(カリフォルニア州)、韓国の3か所で暮らしてきた人物だ。だから3か国語を自由に操る。瀬戸内寂聴さんの金子文子を描いた作品が生々しかったとも言っていた。20分だけインタビューした。

「金子文子と朴烈(パク・ヨル)」で、大正時代に活動したアナーキストの文子役を演じた俳優のチェ・ヒソさん映画「金子文子と朴烈(パクヨル)」で、文子役を演じた俳優のチェ・ヒソさん

 その後、新宿で、室井佑月さんと対談。まとまりのない話になってしまった。室井さんとはほとんど価値観の対立を感じないので、かえって話が深化しにくいのかもしれない。

 その後、考えた末、官邸前の望月衣塑子記者の質問制限問題などに象徴されるメディア危機に関する抗議集会に一人で出かけることにする。午後7時過ぎに現場に到着すると、

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