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北朝鮮大使館襲撃に関与。「自由朝鮮」の正体とは

リーダーはエール大卒の韓国系アメリカ人で人権団体創設者。FBIとも情報共有

高橋 浩祐 国際ジャーナリスト

スペイン判事が捜査内容を公開

マドリード郊外にある北朝鮮大使館の入り口=2019年3月1日拡大マドリード郊外にある北朝鮮大使館の入り口=2019年3月1日
 「自由朝鮮」やホン氏の正体に迫る前に、スペイン司法当局が公表したばかりの捜査状況をみておきたい。

 スペインの首都マドリードにある北朝鮮大使館に武装した覆面姿の男10人が押し入った事件の詳細については、前回の拙稿(「米朝関係悪化の一因?情報機関が注目するある事件」)で述べたため、ここでは最新の追加情報のみを記したい。

 スペインでは、高等裁判所が犯罪を捜査する権限を持ち、この事件の捜査を続けてきた。「自由朝鮮」の犯行声明発表に先立つ数時間前の3月26日、スペインの予審判事は、今回の事件がアメリカに住み、メキシコ国籍を有するホン氏をリーダーとする10人のグループによる犯行だったことを明らかにした。また、犯行グループのホン氏以外のメンバーとして、韓国系アメリカ人のサム・リュウ氏と韓国籍のウー・ラン・リー氏の名前を挙げた。

 ホン氏はもともとサンディエゴ出身の韓国系アメリカ人。しかし、AP通信によると、マドリードに滞在中、メキシコ大使館に行き、新たなパスポートを申請したという。さらに、逃走時に使った配車アプリ「ウーバー」には、「オズワルド・トランプ」との名前で登録していた。

 北朝鮮関連の専門ニュースサイト・NKニュースによると、ホン氏の両親がメキシコでの宣教者であるため、メキシコのパスポートが入手できたという。

 スペインの全国紙エルパイスなど現地メディアの最新の報道によると、スペインの予審判事はホン氏とリュウ氏の2人に対して、国際逮捕状を出した。不法監禁、強盗、脅迫、窃盗など6つの罪を問うている。

Alexander Lukatskiy/shutterstock.com拡大Alexander Lukatskiy/shutterstock.com
 裁判所の資料によると、犯行グループは大使館員に対し、自らを「北朝鮮解放のための人権団体や人権運動のメンバー」と名乗ったという。犯行時、騒ぎを聞きつけて駆け付けた地元警察に対し、「何も問題は起きていない。通常通りだ」と応対したのは、金正恩氏のバッジを付けて現れたホン氏だったという。

 10人は大使館からコンピューターやハードディスク・ドライブ、携帯電話などを奪った後、4つのグループに分かれてスペインから脱出し、ポルトガルの首都リスボンに向かった。

 主犯格のホン氏はリスボンから飛行機に乗り、2月23日午後2時に米ニュージャージー州のニューアーク国際空港に到着した。そして、その4日後の2月27日にFBIと接触し、事件の情報提供に加え、大使館で得たとされるオーディオ(視聴覚)資料を差し出したという。

スペインと連携したFBI

 それにしても、なぜこれほどまでにスペイン捜査当局は、ホン氏の事件後の動向をつかめたのか。

 今回の事件をめぐり、FBIは声明で、「FBIは、スペインの法執行機関と強力な提携関係を有している」と述べている。このため、ホン氏に関するスペイン捜査当局の問い合わせに対し、FBIが2月27日のホン氏との接触までの情報を提供した可能性がある。

 しかし、スペイン当局は2月27日以後のホン氏の足取りはつかめていない。

 ロイター通信によると、スペイン当局は犯行グループ全員がアメリカに渡ったとみて、彼ら容疑者のスペインへの引き渡しを求める方針だ。28年の服役に課せられる可能性があるとされる。

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筆者

高橋 浩祐

高橋 浩祐(たかはし・こうすけ) 国際ジャーナリスト

英国の軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員。1993年3月慶応大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務める。

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