藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)
1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
きっかけは防衛省のPKO日報問題。開発会社社長の元自衛官にその可能性を聞く
ただ、守本氏にはさらなるこだわりがあった。「防衛省のあの件が大きなきっかけでした」。南スーダンPKO(国連平和維持活動)に参加する陸上自衛隊の部隊が作った活動記録である「日報」をめぐる、2年前のあの大混乱だ。
部隊派遣先の首都ジュバで大規模戦闘があった2016年7月の日報について、情報公開法に基づく開示請求がなされた。陸自の説明は、「もう捨ててしまった」「いや実はあった」などと転々とした。揚げ句、防衛省全体としての隠蔽まで疑われ、翌年には稲田朋美防衛相をはじめ、事務次官、陸上幕僚長がそろって辞任するという前代未聞の事態に陥った。
【PKO日報問題に関する藤田記者の記事(withnews)はこちら】
守本氏はそんな日報問題の教訓を、「防衛省に限らず、どんな組織でも直面しうるチャレンジ」としてとらえた。
「何らかの問題で対外的な説明を求められた時、定められた期間内に出すべき文書を仕分け、その中でも明かせない情報は墨塗りする。一連の作業が誠実に行われたのかが後で問われても、きちんと説明できるようにしておくことも大切です」
しかし、日報問題の根は深い。そもそもが隠蔽から始まっているからだ。陸自で日報を管理する中央即応集団司令部の副司令官が、「部隊情報の保全や開示請求増加への懸念」から日報を出したくないと考え、「行政文書の体をなしていない」と請求対象から外す判断をしていた。
とんでもない話だが、この司令部はその名称からも伺えるように多忙で、開示請求への対応が重荷になっていた面もある。日報問題ほどひどくなくても、中央省庁が「多忙」という理由で開示判断を引き延ばすことは、私も外務省への請求でたびたび経験している。
論座ではこんな記事も人気です。もう読みましたか?