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韓国・済州島、71年後の「4.3事件」

文在寅政権下で広く注目されるようになった島民虐殺事件。4月3日を前に島を訪れた

市川速水 朝日新聞編集委員

真相究明に努めた地元の新聞

 一方、韓国では、地元の済民日報という、読者を株主にした当時としては珍しい経営の新聞が、1990年から4.3特別取材班を組み、事件の証言者を探したり、真相究明につながる資料を発掘したりする長期連載を始めた。連載は10年間にわたり、計456回。その時の社会部の中心的存在だった梁祚勲(ヤン・ジョフン)さんが、今、公園を運営管理する「済州4.3平和財団」の理事長を務める。

拡大「4.3の背景をぜひ知って欲しい」と施設を説明する梁祚勲理事長
 梁さんは1948年、まさに事件が始まった年に生まれた。たまたま肉親に犠牲者がいなかったことが、逆に島の真相を調べたいという意欲につながり、また、個人的な復讐心からではないと見られたことが、遠いソウルにもジャーナリスティックな動機が理解されたのではないか、と振り返る。

 そこに、政治体制を超えて、過去の様々な事件の真相を明らかにしようとした金大中氏が登場した。自身が東京で韓国情報機関に拉致された事件もその一つとして知られるが、4.3事件についても過去を清算するための法的・制度的な仕組みをつくる約束をした。

 その真相究明の土台となる調査報告書づくりのチーム長になったのが梁さんだった。

 このあたりの、韓国全体が事件を認知していくいきさつ、真相が今、どの程度解明されているのかに関しては、昨年9月に日本で発刊された「済州島を知るための55章」(編著=梁聖宗・金良淑・伊地知紀子、明石書店)に詳しい。

 この本は、済州島の豊かな自然や風土に触れながら、日本との歴史的な深いかかわり、そして4.3事件にも深く触れている、類書のない分析本といえる。

 そして、「4.3」の名誉回復の方法について合意されたのは、個人への謝罪や被害補償というよりも、

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筆者

市川速水

市川速水(いちかわ・はやみ) 朝日新聞編集委員

1960年生まれ。一橋大学法学部卒。東京社会部、香港返還(1997年)時の香港特派員。ソウル支局長時代は北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議を取材。中国総局長(北京)時代には習近平国家主席(当時副主席)と会見。2016年9月から現職。著書に「皇室報道」、対談集「朝日vs.産経 ソウル発」(いずれも朝日新聞社)など。

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