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大阪ダブル選挙で問われる維新政治の中身

大阪維新の会の来し方、3月の有権者意識調査から見えてきたもの

三浦瑠麗 国際政治学者・山猫総合研究所代表

2015年の都構想住民投票で惜敗したが……

大阪府知事に初当選し当選証書を受けとった橋下徹氏=2008年1月28日、大阪市中央区の大阪府庁拡大大阪府知事に初当選し当選証書を受けとった橋下徹氏=2008年1月28日、大阪市中央区の大阪府庁
 今回のダブル選を分析するうえで重要なのは、「時間軸の概念」を取り入れることです。

 大阪維新の会は2010年に結成された地域政党で、今年の4月に9年を迎えます。橋下徹氏の府知事当選はそれに先立つ2008年です。弱冠38歳のタレント知事として当選した彼が、2009年に成立した民主党政権との距離感を調整しながら永田町を脅かし続け、日本の風雲児かつ総理候補として国内外から注目されていたのが、およそ2013年までの期間でした。

 しかし、中央政界で立ち上げられた日本維新の会が石原慎太郎氏らと提携したあたりを境に、全国的な求心力は低下します。そして、全国政党としての日本維新の会が内輪揉めした結果、求心力は大阪の地域政党へと戻っていきます。

 大阪維新の会は、活動の本来の大義である都構想に「政治資源」を集中し、住民投票の実施にこぎつけますが、2015年5月の投票ではおよそ1%の僅差(きんさ)で敗北を喫します。しかし、半年後の11月に行われた大阪の府知事選・市長選では、橋下氏が出馬せずに吉村洋文氏を擁立して応援した結果、知事選に出た松井氏、吉村氏の二候補の圧勝に終わりました。

 住民投票に敗れた直後、橋下市長(当時)は政界引退を宣言し、都構想反対派が対案として掲げていた「大阪会議」を開催しましたが、大阪会議は討議課題について合意することすらできず、府市協力のメカニズムとして実質的に機能することはありませんでした。そこであらためて、有権者は維新政治の信を問う選挙で、維新政治を「終わらせない」ことを選んだのでした。

安倍長期政権のもと求心力を維持

 日本維新の会が迷走し、維新が住民投票に力を注いでいたちょうどその間、中央政界では第2次安倍政権が盤石の長期政権を築きます。「改革」の旗印を掲げていた民主党政権が諸々の理由から失敗したとき、いったんは維新などに流れた無党派の改革支持層の票は、同じく「改革」を掲げた安倍首相の率いる自民党に流れ込んだからです。国政における維新の党勢の低迷は、第2次以降の安倍政権が、改革の旗印を曲がりなりにも持っていたことの裏返しでもあったわけです。

 ちなみに、安倍政権はまだ盤石ですが、超長期政権の後というのは、「政治資源」を食いつぶされているせいか、後継の首相は長続きしないものです。安倍政権後の自民党の安定性は案外、脆(もろ)いものだということは考えに入れておくべきでしょう。

 党内対立を繰り返し、離合集散していった民主党系の野党に比べると、地域政党としての大阪維新は、小さくはなりましたが、組織統制が際立つうえ、長期目標を共有しており、求心力は失われていません。

今回のダブル選挙が持つ意味

大阪市長退任の会見をする橋下徹大阪市長=2015年12月18日拡大大阪市長退任の会見をする橋下徹大阪市長=2015年12月18日
 橋下氏は、大方の予想に反して、弁護士活動と在野の言論人に戻ることを選びました。彼は持ち前の強気さとは裏腹に、いわゆる個人の権力に対しては実に恬淡としたタイプです。維新が、彼個人を持ち上げる運動ではなく、組織運動体足り得た条件もそこら辺にあると思われます。ただ、スター性のある政治家に欠ける日本政界にあって、「橋下カードを持っている」維新がほかの野党に比べて求心力を形作りやすいことも確かでしょう。

 観察対象として維新がいまだに重要な位置を占めているのは、安倍政権後の2021年を射程に入れたとき、あるいは総裁4選があるのならば、さらにその数年先を見据えたとき、無党派層に刺さる「改革政党」として維新が存在感を発揮する可能性があるからです。だからこそ、維新が今回のダブル選で生き残れるかどうかは、大阪のみならず日本政治にとって大きな意味を持っています。

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筆者

三浦瑠麗

三浦瑠麗(みうら・るり) 国際政治学者・山猫総合研究所代表

1980年神奈川県茅ケ崎市生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。専門は国際政治、比較政治。東京大学政策ビジョン研究センター講師などを経て現職。著書に『シビリアンの戦争―デモクラシーが攻撃的になるとき』(岩波書店)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)、『あなたに伝えたい政治の話』(文春新書)など。政治外交評論のブログ「山猫日記」を主宰。公式メールマガジン、三浦瑠麗の「自分で考えるための政治の話」をプレジデント社から発行中。共同通信「報道と読者」委員会第8期、9期委員、読売新聞読書委員。近著に『21世紀の戦争と平和 徴兵制はなぜ再び必要とされているのか』(新潮社)。

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