塚田氏の「忖度」発言があぶり出す日本政治の病
国交副大臣辞任に追い込まれた塚田氏の問題発言を契機に考えるべきこととは
米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士

福岡県知事選の応援演説をする塚田一郎氏=2019年4月1日、北九州市
国土交通副大臣を辞任
凍結されていた下関北九州道路に、本年度4000万円の国直轄調査予算を計上したことについて、「安倍総理、麻生副総理に忖度(そんたく)して決めた。」と発言した塚田一郎氏が、国土交通副大臣を辞任しました。そもそもは北九州市でひらかれた福岡県知事選の応援演説の席での発言ですが、野党のみならず与党からも批判が強まり、辞任に追い込まれました。
塚田氏の発言はいったい何が問題なのか? 地方自治体の長をつとめた経験を踏まえつつ、あらためて考えてみたいと思います。
「仕事は利益誘導」という政治家観
まずもってなのですが、ほとんど一言一句という形で報道されている塚田氏の応援演説は、悪口のようで大変恐縮なのですが、率直に言って品がありません。
その内容は、それが事実であるにせよないにせよ、内輪の人間関係と、その強固さゆえに、国から地元にお金が降りますという、露骨な利益誘導の話に終始しており、通常なら応援演説の中心となるはずの候補者の崇高(すうこう)な政治理念、高い能力、高潔な人格については、一言も触れられていません。
政治的言及と言えるのはたったひとつ、「『コンクリートから人へ』の流れで、とんでもない内閣があった」という、もう10年も前の民主党政権の悪口だけです。
私は塚田氏とは同郷同世代です。自民党にいたころに、塚田氏が初当選した参院選では新潟5区の選対本部長もつとめ、氏のことをよく知る一人なのですが、この演説は、端的に言って、外野からとはいえそれなりに近い距離で拝見した氏の言動、仕事ぶりからうかがわれる氏の国会議員観、政治家観をかなりストレートに反映したものに思えます。
それは、「政治家の仕事は、党内で強固な人間関係を築き、それを元に地元に利益を誘導することである」という政治家観であり、それが自民党内で決して特異なものではないことは、かつて身をおいた政党ではありますが、一国民として、極めて残念だと思わざるを得ません。