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塚田氏の「忖度」発言があぶり出す日本政治の病

国交副大臣辞任に追い込まれた塚田氏の問題発言を契機に考えるべきこととは

米山隆一 前新潟県知事。弁護士・医学博士

有力者への忖度による行政の意思決定の問題点

辞意を表明する塚田一郎国土交通副大臣=2019年4月5日午前、東京・霞が関の国交省拡大辞意を表明する塚田一郎国土交通副大臣=2019年4月5日午前、東京・霞が関の国交省
 第二の問題点は、すでにさまざまに指摘されていることですが、「有力者への忖度による、行政の意思決定」です。

 私は、一国会議員であれば、地元の代表として、いかようにも地元をアピールし、牽強付会(けんきょうふかい)だろうが何だろうが、国に対して地元の利益となる主張をしていいし、むしろするべきだと思います。

 しかし、副大臣ともなれば、行政府の一員です。たとえ与党の政治家、地元の国会議員としての立場があるとしても、いったん行政府の立場を得たなら、まず行政府の一員として、国全体の利益のために、可能な限り公正に職責を果たすことが優先されるべきです。ことに各地域・各団体の利害が錯綜(さくそう)する公共事業担当の副大臣であれば、限られた予算の中で、どれを採用してどれを採用しないか、できる限り公正に決定しようとぎりぎりまで考える職責があると私は思います。

 ところが、塚田氏の演説からは、そのような葛藤はひとかけらもうかがえません。

 事実か事実でないかはさておくとして、今般の氏の演説は、公共事業の採否、ひいては行政の意思決定を、必要性の優先順位ではなく、有力者への忖度で決定しても特段問題ないという考え方が、自民党内で許容されていることを物語っており、これも一国民として、極めて残念だと思わざるを得ません。

復活する大型公共事業頼みの地方活性化策

 上述の「露骨な利益誘導」と「忖度による行政の意思決定」は、当然それだけで大きな問題なのですが、私は、今般の氏の演説があぶり出した、それと同等、もしくはそれ以上の問題は、中央以上に与党が圧倒的多数を占める地方政治において、脈々と受け継がれてきた「(超)大型公共事業頼みの地方活性化策」が、あからさまに復活しつつあることだと思っています。

下関北九州道路のルートに想定される関門海峡。手前は北九州市、対岸が山口県下関市。中央奥には関門橋が見える=2019年4月1日拡大下関北九州道路のルートに想定される関門海峡。手前は北九州市、対岸が山口県下関市。中央奥には関門橋が見える=2019年4月1日
 問題となっている下関北九州道路は、建設費2000億~2700億円と推定される、まさに(超)大型公共事業であり、建設の目的は、現在の関門トンネル、関門橋の災害時のバックアップと慢性的な渋滞の緩和とされています。

 しかし、ちょっと考えてみてください。

 下関-北九州間には現在、車のルートとして関門トンネルと関門橋という二つのルートがあり、鉄道用ルートとしても山陽本線用関門トンネル、新幹線用関門トンネルの二つがあります。つまり、輸送路は合計四つあるわけです。災害時の一時的バックアップに、これ以上のルートが必要というのは、正直いって牽強付会と言われても仕方がないと思います。

 混雑についても、関門トンネルの老朽化が進むなか、関門トンネルが閉鎖されると、関門橋が混雑するという説明ですが、関門橋の設計通行量7万2千台/日に対して現在の交通量は3万8千台/日、関門トンネルの交通量は2万8千台/日ですので、時間によっては地方の道路としては混雑するのでしょうが、恒常的に車が動かないというような状況とは思えません。

 にもかかわらず、麻生副総理の弟さんが会長を務める下関北九州道路整備促進期成同盟をはじめ、地元財界をあげてこれを推進しているのは、地元では、この道路が「地域発展のカギ」「地域経済の起爆剤」と位置付けられているからだと思われます。

 現在、地方では通常必要と思われるインフラ整備は相当に進んでいます。実はそれ故に、この下関北九州道路のような(超)大型公共事業が「地域の悲願」として、ことさらクローズアップされる傾向があるのです。

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 前新潟県知事。弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

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