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中島岳志の「自民党を読む」(8ー完)小泉進次郎

米国の強い影響、自助を強調。父・純一郎氏と同じタイプの息子に欠けているものは…

中島岳志 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授

アメリカでジャパンハンドラーから影響を受ける

 小泉さんという政治家を分析する際、非常に重要なのは大学卒業後に経験した約3年間のアメリカ留学です。彼はコロンビア大学大学院に進学し、日本政治を専門とするジェラルド・カーチス教授のもとで学びました。この時代に一定の英語力を身につけ、自らの考えを人前で話す技術も習得します。

 そして、非常に重要なのが、留学3年目に所属したCSIS(戦略国際問題研究所)での経験です。

 この機関はワシントンDCにあるアメリカ陸海軍直系のシンクタンクで、日本外交に多大な影響力を持ってきたリチャード・アーミテージなどが理事を務めています。小泉さんが所属していた時の日本部長はマイケル・グリーン。ブッシュ政権のNSC(国家安全保障会議)アジア上級部長です。

拡大ジェラルド・カーティス氏
拡大リチャード・アーミテージ氏

 小泉さんは、ここでジャパンハンドラーズの代表的人物とのつながり、影響を受けます。彼らは日本の有力政治家と接触し、自らの利益にかなう方向へと誘導することで知られます。小泉さんの外交・安全保障観は、親米を軸に構想されています。

 後で述べるように、父と同様、アメリカの意向に沿うような構造改革・規制緩和路線を基調としています。この姿勢は、CSISでの経験を抜きに考えることはできないでしょう。

 帰国後、小泉さんは父の秘書を務め、選挙基盤を受け継ぐ形で、2009年衆議院選挙に出馬します。

世襲批判、そして野党議員としてスタート

 この選挙は、自民党にとって大変な逆風でした。小泉内閣のあと、安倍内閣・福田内閣・麻生内閣が短命に終わり、世の中ではリーマンショックによる貧困・格差が大問題になっていました。自民党のとってきた新自由主義路線が、厳しい批判にさらされます。

 さらに厳しかったのは、自民党の中から激しい世襲批判が出ていたことです。その代表格が菅義偉さんで、選挙に向けて「世襲制限論」を訴えていました。

 民主党による政権交代への期待と自民党批判。そして世襲批判。小泉さんは、いきなり逆境に立たされます。

 選挙中には足を踏まれたり、ペットボトルを投げられたりしたといいます。時には名刺を目の前で破られ、演説中に「うるさい!」「世襲反対!」とやじられました。小泉さんの耳には、様々な罵詈雑言が耳に入り、「いちいちへこ」んだといいます(前掲「小泉進次郎が初めて語るわが青春、わが自民党」)。

 結果、小泉さんは当選したものの、自民党は惨敗を喫し、民主党による政権交代が実現します。小泉さんは野党議員として、政治家人生をスタートすることになりました。

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筆者

中島岳志

中島岳志(なかじま・たけし) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授

1975年、大阪生まれ。大阪外国語大学でヒンディー語を専攻。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科でインド政治を研究し、2002年に『ヒンドゥー・ナショナリズム』(中公新書ラクレ)を出版。また、近代における日本とアジアの関わりを研究し、2005年『中村屋のボース』(白水社)を出版。大仏次郎論壇賞、アジア太平洋賞大賞を受賞する。学術博士(地域研究)。著書に『ナショナリズムと宗教』(春風社)、『パール判事』(白水社)、『秋葉原事件』(朝日新聞出版)、『「リベラル保守」宣言』(新潮社)、『血盟団事件』(文藝春秋)、『岩波茂雄』(岩波書店)、『アジア主義』(潮出版)、『下中彌三郎』(平凡社)、『親鸞と日本主義』(新潮選書)、『保守と立憲』(スタンドブックス)、『超国家主義』(筑摩書房)などがある。北海道大学大学院法学研究科准教授を経て、現在、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。

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