メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

「合わせ鏡」の天皇と国民 姜尚中氏、改元を語る

【2】ナショナリズム 日本とは何か/「世替わり」の日本 姜尚中氏との対話②

藤田直央 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

拡大筆者と皇居の参観を終えた姜尚中・東大名誉教授=3月7日、桔梗門前

 皇位が継がれゆくいま、皇居を姜尚中・東大名誉教授(68)と歩いて、日本とは何かを改めて考えた。3月の小雨の中で約1時間の参観を終え、私は姜さんに「世替わりで何が継がれるのでしょう」と問うてみた。

【前回「皇位継承で日本はどこへ 姜尚中氏と皇居を歩く」はこちら】

何が継がれるのか

 「象徴天皇制でしょう」と姜さんは答えた。「軍服を着ないで天皇になられたのは、平成が初めてですから」

 敗戦後の新憲法で天皇は「日本国と日本国民統合の象徴」となり、形式的な国事行為だけをすると定められた。ただ、昭和天皇は、戦前の日本で統治者として君臨した存在感を、戦後もなお宿した。

 長男の天皇陛下は、1989年に即位した時から象徴としての天皇だった。高齢となり、3年前の「おことば」(ビデオメッセージ)に「全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが難しくなるのでは」と譲位の望みをにじませた。

 「おことば」にあった「日本の皇室がいかに生き生きと社会に内在するか」という発言に、姜さんは驚いたという。

 「象徴としてあり続けるためには、存在しているだけでなく、行動していかないといけない。だから今上天皇は被災者の慰問や戦没者の慰霊へ足を運ぶ。地べたに降りて行動しないといけない。象徴天皇制は平成になって本格的に作られたんじゃないか」

 その象徴としての天皇が継がれゆく。

拡大誕生日を前に記者会見する皇太子殿下=2月21日、東京・元赤坂の東宮御所、代表撮影

 3年前の「おことば」に、皇太子殿下は2月の誕生日前の記者会見で「とても心を揺さぶられました」と述べた。「象徴とはどうあるべきか、その望ましいあり方を求め続けることが大切であるとの考えは今も変わっておりません」とも語った。


筆者

藤田直央

藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

藤田直央の記事

もっと見る