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吉田松陰の姿、教育の場に今も

【6】ナショナリズム 日本とは何か/吉田松陰が遺したもの④

藤田直央 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

拡大山口県萩市立明倫小学校。ゆかりの吉田松陰の肖像画と、児童らが毎朝教室で唱える「松陰先生のことば」が並ぶ=1月30日、萩市江向

 東アジアに欧米列強が押し寄せた幕末、思想家・吉田松陰は守るべき日本とは何かを突き詰め、領土拡張論から開国通商論に至るまで、めまぐるしく思想を巡らせた。そんな松陰は、明治維新を担うことになる志士らに人としてのあり方から説く教育者でもあった。故郷の山口県萩市では今も、「先生」と呼ばれている。

ゆかりの小学校で「朗唱教育」

拡大明倫小学校の教室。毎朝唱える「松陰先生のことば」が壁に並ぶ=1月30日、萩市江向
 萩を訪れた1月末、松陰が祀られる松陰神社から松本川を渡り、市街へ向かった。

 高杉晋作や木戸孝允の生誕地がある旧城下町の手前に、市立明倫小学校がある。萩藩兵学師範を務めた松陰が教えた藩校明倫館にゆかりがあり、授業前に各教室で毎朝、子どもたちが松陰の遺訓を唱えている。

 明倫小のホールには松陰の肖像画ととともに、学年ごとの「松陰先生のことば 朗唱文」の書が並んでいた。学期ごとに「ことば」は変わり、6年間で18文になる。1年生の「親思うこころにまさる親ごころ」から、6年生の「冊子を披繙すれば 嘉言林の如く躍々として人に迫る」まで、だんだんと難しくなっていく。

拡大明倫小学校の教室に貼られていた「朗唱の手引き」=1月30日、山口県萩市江向
 今のような形での「朗唱教育」に取り組み始めたのは1982年。各学期の朗唱文は小学校の「道徳」の学習指導要領にも対応しているという。「ことば」の意味と、自分の日常にどう生かすかを考えさせている。

 放課後に2年生の教室をのぞくと、担任の若い女性が明日の準備をしていた。「子どもたちは意味を忘れてしまうので、もめ事をした時などに、あの『ことば』どういう意味だっけ? と思い出させます」と話してくれた。

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筆者

藤田直央

藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)

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