北海道知事選の惨敗から見えた「結党ストーリー」の終焉
2019年04月11日
気がつけば、風がやんでいた。
1年半前の衆院選で野党第一党の民進党が分裂。ちりぢりになった野党勢力の中で唯一、期待されていたのは、野党第一党に躍り出た立憲の「勢い」だった。
しかし、4月7日に投開票された統一地方選の前半戦、11道府県知事選のうち唯一、与野党対決の構図になった北海道知事選で、自民党、公明党、新党大地が推薦した前夕張市長の鈴木直道氏(38)が、立憲民主党など野党5党が推薦した元衆院議員の石川知裕氏(45)に圧勝したのだ。
かつて「民主王国」と呼ばれ、いまでも立憲の国会議員が多い北海道でも、互角の戦いに持ち込むことさえできなかった。
北海道知事選だけではない。
同じ7日に投開票された41道府県議選と17政令指定市議選で、立憲は計217人が当選した。この数字は、国民民主党の116人を大きく上回っている。しかし、両党の当選者を合わせても、4年前の民主党の391人を下回っている。
大阪維新の会が大阪府知事・市長のダブル選挙を制した大阪では、立憲は府議選で1議席にとどまり、市議選では0議席。惨敗と言ってもいい。
地方議員は、国政選挙の際に候補者を実動部隊として支える存在でもある。その数は、その党の勢いを示すバロメーターとも言える。
今年は、統一地方選と参院選が重なる12年に一度の「亥年」だ。12年前の「亥年」、2007年の参院選で自民党は歴史的大敗を喫したが、その直前の統一地方選の道府県議選と政令指定市議選で、自民党が議席を減らした一方、民主党は議席を大きく積み増していた。
今回の統一地方選の結果から、今夏の参院選はどう見通せるのか。北海道知事選から読み解いてみたい。
知事選には、鈴木氏と石川氏が立候補し、無所属の新人同士の一騎打ちとなった。開票結果は以下の通りだ。
鈴木直道 1621171票(得票率63%)
石川知裕 963942票(得票率37%)
投票総数 2613522人(投票率58.34%)
石川氏は、いうまでもなく小沢一郎・自由党代表の元秘書だ。2007年に繰り上げ当選で民主党の衆院議員になったが、2010年に小沢氏の資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件で逮捕された。最高裁まで争ったものの、有罪判決を受けている。
この事件の記憶が有権者の判断に影響しなかったとは考えにくい。
とはいえ、故・中川昭一氏(自民)の強固な地盤だった北海道11区を掘り起こしてきただけあって、演説も巧み。地場産品や地域課題を採り上げながら政策を訴え、「相手候補はイケメン。私には子どもが2人いる。イケメンよりイクメンで」と笑いを取りつつPRした。
掲げたのは、「北海道独立宣言」。「戦うときには戦う知事でないといけない」と訴えた。北海道民のアイデンティティを刺激しつつ、自民、公明の与党が推薦し、菅義偉官房長官との近さも指摘された鈴木氏との違いを強調するものだ。
「イデオロギーよりアイデンティティ」を掲げ、「オール沖縄」で与党系候補を破った昨年9月の沖縄県知事選が念頭にあったに違いない。公示日前日には玉城デニー沖縄県知事も石川氏の応援に入った。
こうした動きに、鈴木氏は「国の力は頼らなくてもいいという意見もあるようだが、違うと思う。いまこそ国と北海道と市町村が一体となって、難局を乗り越える時代だ」と反論に追われた。「独立宣言」を争点化することに成功したのだ。
では、何が欠けていたのか。
それは、「川上戦術」だ。
先に触れた前の亥年の2007年参院選。このとき当時民主党代表だった小沢氏がヘリやチャーター機を駆使してまで徹底して回ったのは、それまで自民の地盤で、民主の候補がほとんど回ることのなかった山間部や離島だった。
川上の山間部で演説会を開けば、その評判が川下の都市部へと広がっていく――。川上戦術とは、そんな選挙戦術だ。
財政再建団体に転落した北海道夕張市の財政問題に道筋をつけたという看板がある鈴木氏と違って、石川氏は政治資金事件のせいでマイナスイメージを抱いていた有権者も少なくない。その印象を覆すには、川上戦術しかなかったはずだ。
ところが今回の北海道知事選で、この戦術を採ったのは小沢氏の元秘書の石川氏ではなく、皮肉にも鈴木氏だった。
選挙戦終盤の4日。大票田の札幌市にいる石川氏を尻目に、鈴木氏は富良野町、美瑛町、旭川市などを回った。この日までに4000数百㌔を走行し、179市町村のうち149市町村を回って3万5千人に会って握手をした、という。そして、こう訴えた。
「『うちの町に知事候補が来たのは20何年ぶり』と言われた。『うちの町に来る時間があったら、札幌で演説した方が多くの人に会えるんだから』と。しかし、多くの人に会えるからと言って札幌で毎日訴えたら、その政治家の根っこが透けてみえる」
誰しも一度、成功すると、その成功体験からなかなか抜け出せないものだ。立憲民主党の枝野幸男代表にとっての成功体験は、
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