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「殺されてもいい」小泉首相捨て身の郵政選挙の罪

平成政治の興亡 私が見た権力者たち(14)

星浩 政治ジャーナリスト

激化する自民党内の対立

 2004年末までは小泉首相と自民党内の民営化反対勢力とのにらみ合いが続いた。年が明けて05年1月21日、通常国会が召集された。小泉首相は施政方針演説のうち約2割を郵政民営化にあてた。

自民党本部の郵政改革関係合同部会に出席した与謝野馨政調会長(右)と園田博之座長=2005年4月8日、東京・永田町拡大自民党本部の郵政改革関係合同部会に出席した与謝野馨政調会長(右)と園田博之座長=2005年4月8日、東京・永田町
 「改革の本丸が郵政民営化だ。昨年9月に決定した基本方針に基づいて、07年4月に郵政公社を民営化する法案を今国会に提出し、成立を期す」

 まさに「戦闘宣言」だった。

 これに対し、自民党内の民営化反対派も対決姿勢を崩さなかった。反対派には、①政局的に小泉首相と対決する亀井静香氏ら②過去に郵政相を務めるなど郵便局との関わりが深い野田聖子氏ら③郵政民営化によって地域の金融サービス機能が低下し過疎化が加速することを懸念する堀内光雄氏ら――がいた。

 4月に入り、園田政調副会長らの調整で、政府の基本方針に①郵便局が全国であまねく利用される(ユニバーサル・サービス)ことを法律で義務づける②全国での金融サービスを維持するため1兆円規模の地域・社会貢献基金を設ける――などの修正が加えられた。だが、それでも対立が解消することはなかった。

かろうじて可決した法案

 4月27日、小泉首相は基本方針に基づいて郵政民営化の関連法案を閣議決定、国会に提出した。大型連休明けには衆院に関連法案を審議する特別委員会が設けられ、自民党の二階俊博氏が委員長に就任。自民党の反対派も次々と質問に立ち、審議は延べ108時間に及んだ。法案は一部修正されたが、それでも自民党内の溝は埋まらなかった。

 7月4日、法案は委員会で可決され、焦点は翌5日の衆院本会議での採決に移った。自民党から47人が反対に回れば法案は否決される。いったい何人が造反するのか? 私たち朝日新聞政治部も、自民党の衆院議員一人一人に賛否を確認し、懸命に票読みを進めた。

衆院本会議で郵政民営化法案に反対票を投じた綿貫民輔・前衆院議長。野党席から拍手が起こった=2005年7月5日拡大衆院本会議で郵政民営化法案に反対票を投じた綿貫民輔・前衆院議長。野党席から拍手が起こった=2005年7月5日
 5日午後1時、衆院本会議開会のベルが鳴り、記名投票に入った。自民党の議員が反対の「青票」を投じるたびに議場からどよめきが起きた。綿貫民輔、堀内光雄、亀井静香、平沼赳夫の各氏らのベテランに加え、野田聖子、古屋圭司、森山裕、小林興起、城内実の各氏ら中堅・若手も青票を投じた。

 投票結果を河野洋平議長が読み上げる。

 「可とする者233、否とする者228」。

 わずか5票差で郵政民営化関連法案は可決された。自民党内の反対は37人、欠席・棄権は14人だった。小泉首相はひとまず、胸をなで下ろした。だが、反対派は「第1ラウンドではノックアウトできなかったが、第2ラウンドの参院で完璧にノックアウトする」(亀井氏)と、参院での否決に向けて気勢をあげた。

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筆者

星浩

星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト

1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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