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F35A墜落事故が示す日本の安全保障の落とし穴

F35頼りの防空体制は危険。機種は最低3種類が望ましい

高橋 浩祐 国際ジャーナリスト

世界で拡大するF35の調達

 さて、そのF35はアメリカ、イギリス、イタリア、オランダ、トルコ、カナダ、オーストラリア、ノルウェー、デンマークの9カ国による国際共同開発機だ。現在、アメリカとのF35売却問題で揺れる北大西洋条約機構(NATO)加盟国のトルコも、実はシステム開発実証(SDD)の段階から参加し、降着装置やコックピットに搭載されるディスプレイなどの部品を供給している。

空自のF35Aが行方不明になった海域を捜索する海保の巡視船=2019年4月10日午前8時15分、青森県三沢市沖の太平洋上、朝日新聞社機拡大空自のF35Aが行方不明になった海域を捜索する海保の巡視船=2019年4月10日午前8時15分、青森県三沢市沖の太平洋上、朝日新聞社機
 これらの9カ国に、イスラエル、日本、韓国、ベルギーがF35調達国として加わった。さらに、フィンランドやスイス、アラブ首長国連邦(UAE)も購入を検討。最近では、米国防総省(ペンタゴン)のF35プログラム事務局長のマティアス・ウィンター海軍中将が米下院に対し、シンガポール、ギリシャ、ルーマニア、スペイン、ポーランドの5カ国も売却先として視野に入れていると報告した。

 ロッキード・マーチンによると、2019年4月時点で3000機以上の建造が計画され、すでに世界中で380機以上が引き渡された。訓練を受けたパイロットは790人超、整備保守担当者は7200人超にそれぞれ及ぶ。

 世界ではアメリカとその同盟国7カ国の17の基地に配備済みだ。日本では青森県の米空軍三沢基地と航空自衛隊三沢基地にF35Aが、山口県の米海兵隊岩国基地にF35Bがそれぞれ配備されている。お隣の韓国でも3月29日に韓国空軍清州基地に2機のF35Aが引き渡されたばかりだ。

 F35をめぐる世界での部品供給企業は1600社を超え、アメリカだけでも直接雇用、間接雇用を含め、19万4000人の職を生み出しているという。

 今回の墜落事故が世界の大きな注目を集めている理由は、F35の調達がグローバルに広がっているという点にある。

F35を大量に購入する日本

 「墜落機がF35であること、そして、日本がF35を大量に購入していることを踏まえると、今回の事故は重要な出来事だ」

 筆者が東京特派員を務める英軍事週刊誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』のアジア太平洋担当デスクは4月9日夜、墜落事故の一報を聞き、こう述べた。

 空自は現在4種類の戦闘機を使っているが、F35への依存度を年々高めている。

 2018年度の防衛白書によると、空自は昨年3月末時点で、ベトナム戦争で名を馳せた第3世代のF4を52機、1981年より運用を開始し主力戦闘機である第4世代のF15を201機、米ゼネラル・ダイナミクスが開発したF16をベースに日米が共同開発した第4世代のF2を92機、そして、第5世代のステルス戦闘機F35Aを4機それぞれ保有していた。

 このうち、老朽化が進むF4は2008年以降、本格的な減勢に入っている。そのF4の後継機として、民主党時代の野田佳彦政権が2011年12月、アメリカ主導で国際共同開発中のF35Aを次期主力戦闘機(FX)として正式に決定、42機の購入を決めた。世界の空軍では、機体のマルチロール化(多用途運用)が進んでおり、空自も自ずと空対空、空対地、空対艦攻撃をすべてこなせる「マルチロールファイター」のF35を選ぶ結果となった。

 2012年度予算には早速、F35A戦闘機4機分の395億円を含むF35A取得関連600億円を新規計上した。以後、防衛省は毎年コンスタントに2~6機のF35Aの取得費を計上、2019年度予算までに合計で40機分の取得費として約5800億円を計上している。これは単純計算で1機当たり約145億円になる。毎年の整備用器材など関連経費を含めれば約8750億円に達する。

 安倍内閣は昨年12月、F35を将来的に147機体制とする方針を閣議了解した。F35Aは当初予定の42機からさらに63機を追加購入。さらにヘリ空母「いずも」と同型の「かが」に搭載するF35Bも42機調達する方針を決めた。追加取得の総額は少なくとも約1兆2000億円に上る見通しだ。

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筆者

高橋 浩祐

高橋 浩祐(たかはし・こうすけ) 国際ジャーナリスト

英国の軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員。1993年3月慶応大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務める。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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