2019年04月15日
3月26日(火) 早朝、調査案件でアメリカと話をする。その後、局で「報道特集」の定例会議。自分のなかの何かが折れそうだ。岩波書店から出る過労死に関するルポルタージュの推薦文を書く。NHKの都庁担当だった社会部記者の過労死を追ったもの。NHKの隠蔽体質が容赦なく描き出されている。他人事ではないリアリティ。
午後6時前から、早稲田大学でジャーナリズムスクールの新入生へのプレゼンテーション。その後、新宿で沖縄から上京中のS記者。沖縄もいろいろな動きがあるのだなあ。琉球新報社はワシントン支局を閉めるそうだ。残念至極。ワシントンに沖縄の地元紙が支局を持っていた意味は大きかったのだが。そのままESPAへ。
3月27日(水) 電話が見当たらない。どこに置いてきたのかな。ESPAかな。早起きしたのでプールへ行き、そこそこ泳ぐ。ストレスが激しく溜まっているのだ。昨夜の暴飲暴食で体重が一気に増えていた。
知人から薦められていたドキュメンタリー映画『主戦場』をみる。これは放っておけない映画だ。インタビューが基本になっているが、その人の主張を丁寧に引き出していてその論理的整合性にしっかりとこだわっている。以前みたドキュメンタリー映画『太陽の塔』に似ているように思う。ロジックの整合性に対するこだわりが、だ。「週刊現代」のコラム記事を書く。ピエール瀧報道などをめぐって。夜、R。
3月28日(木) 今日も早起きしてプールで泳ぐ。改元をめぐる本の校正。調査案件。早稲田大学でS教授。その後、四谷でT。ものごとが全く思うように進捗せず。
3月29日(金) 調査案件の作業継続。夕刻より北朝鮮の経済改革をテーマにしたアジア記者クラブの勉強会に顔を出す。確かに北朝鮮の大同江ビールはうまかった。韓国のOBビールよりもずっとうまい。だが北朝鮮がその大同江ビールを輸出して外貨を得るまでには、さらにさらに時間を要するだろう。その後、神保町のY。
3月30日(土) 「報道特集」のオンエア。社会部との共同取材、東京福祉大学の留学生(研究生)の1400人にのぼる所在不明をめぐって。後半は日下部正樹キャスターの深圳リポート。この中国リポートは見ごたえがあった。ドローンなどのハイテク開発、特にあらゆる生物のDNAを保有して「現代のノアの箱舟」と自称するDNAバンクの最先端をみると、正直とても怖いものを感じた。これは行くところまでいくだろうな、と。それと対照的な、深圳に集まってくる出稼ぎ労働者のたこ部屋状態。2つの特集に通底する労働力不足とすさまじい格差。急激な経済発展がすさまじい格差を生む。そしてその格差が、より這い上がりたいという欲望を再生産して、労働力の巨大市場ができる。こんな状況で中国は、共産党という党名や社会主義建設というスローガンを一体いつまで主張し続けられるのだろうか。
オンエア後、市谷で開かれている『噂の真相』編集長・岡留安則を賑やかに送る会に。花冷えに加えて雨が降り出すなか、500人近い人々が参集していた。人畜無害な「優等生」とは無縁のジャーナリストたちが大勢来ている。多くの知己が訪れていて、それぞれに挨拶を交わす。みると、今をときめく弘中惇一郎弁護士がいた。岡留さんの弁護士をやっていた時期があったとのこと。青木理が司会をしていた。
目を引いたのは、『噂の真相』が廃刊した当時に、TBS『筑紫哲也 NEWS23』が特集をつくっていて、ゴールデン街の「ひしょう」で筑紫・岡留対談を挙行し、メディア状況を言いたい放題に語りあっていたVTRが会場で流れたこと。『噂の真相』編集部が襲撃された時の映像も紹介しながら、メディアが「戦後最大の危機にある」と岡留さんが語っていた。当時は個人情報保護法が通った時期でもあった。「戦後最大の危機」。何の、何の。こんな特集企画がちゃんとデイリーのニュース番組の特集として通り、オンエアされていた時代は何とよかったことか。その後、僕らの国は安保法制や、特定秘密保護法、「共謀罪」などをどんどん通していった。
参加者たちは個性派ぞろいなので、話を始めると止まらなくなる。ある人と話をしていたら、岡留さんは法政大学の黒ヘルグループにいたとか何とかの話からどんどん広がっていって、久しぶりに「山口建二」の名前を聞いた。本当に謎の人物だった。僕はかつて新大久保の喫茶店でその「山口建二」氏にインタビューした経験があるけれど、生きているうちに会って話が聞けてよかった。戦後史の謎の部分。彼は林彪事件に日本人として連座し、伊藤律と同じ北京の牢獄に収監されていた。雨足が強くなって、会場で久しぶりに会ったIさんと別場所に。そこでMさんも合流。元気な人たちだ。
3月31日(日) きのうよりは幾分あたたかくなったが、まだひんやりとする。新宿に出て紀伊国屋書店で本を漁る。『現代思想』の移民特集などを購入。15時から松元ヒロさんのステージ『ひとり立ち』。今や紀伊国屋ホールはヒロさんのホームグラウンドという感じだ。久米宏さんが言ったそうだが、新しい元号は「西暦」がいいとか。
その後、赤坂の某所の公園で港合同法律事務所の恒例のお花見。屋外なのでまだ寒い。安田弁護士は所用で不在だった。知った顔多数。というか、どこに行っても同じ顔触れが多いというのは、自分の行動パターンとしてはちょっとヤバいんじゃないのか、と自省する。そこそこにお酒を飲む。
4月1日(月) 新しい元号が決まる日だ、今日は。早めに局に出て、テレビをモニターしていた。局に着いてテレビのモニターをみる。午前8時39分段階。NHKは、例の岩田明子記者がスタジオ生出演で解説していた。フジテレビは、新元号まであと2時間50分45秒とかカウントダウンしていた。宮崎県の「安久」町を取材していた。新元号が「安久」になることをあてこんでの、やけくそ企画みたいなもんだ。テレビ朝日とテレ東は今のところ通常通りの番組。だが、テレ朝は途中から元号特番モードに。いくつかの局が、有識者会議のメンバー、宮崎緑氏と林真理子氏が自宅を出るところを放送していた。すごいことになっている。宮崎緑氏は不可思議な服装をめしておられた。以降、僕はずっとNHKをみていた。すると、だんだん苦痛になってきたのだった。
官邸の記者会見室は満席だ。「日本中がこの歴史的瞬間を待ちわびている。まさに歴史の1ページに残る瞬間がこれから始まる」とNHKのアナウンサーはコメントして盛り上げている。ゲストの所功京都産業大学名誉教授が「歴史の場に立ち会うということで興奮しております」。
午前11時25分。臨時閣議終了と報じる。発表が始まると言われていた午前11時30分になっても何も起こらない。岩田記者「官房長官はおそらく会見場に向かっているところだと思われます」。女性ゲストのひとり中川翔子という人が「定刻を過ぎてから心臓のドキドキが止まりません」。11時32分。「杉田官房副長官から宮内庁に報告が行く……」。ヘリ空撮で皇居に向かう車をワイプ画面で映し出している。所氏「政令で定める。政令に天皇が署名する。憲法に定められていることですから……」。11時40分。岩田コメント「安倍総理としては、夢と希望が咲き誇る。次の時代に向けた思いを新しい元号に重ねている……」。アナウンサー「菅官房長官が入ってきました。平成に替わる新しい元号は何になるんでしょうか」。
午前11時41分。「新しい元号は『令和』」。……墨書された「令和」のパネルに視線が集中する。「出典は万葉集の中にある……」。岩田記者解説「令は、よいという意味、和は、穏やか、争いのない。総理も色紙にサインする際、『和をもって尊しとなす』と書いていたように『和』にこだわりがあった」。選んだ思いについては、「安倍総理が後ほど、どういった思いを寄せたのか、将来の希望……」(何だかまるで安倍首相が全部決めたみたいだな)。所氏「ちょっとびっくりしました。従来は中国の古典から。万葉集のことばがき……」。菅官房長官「今般決定した元号が広く国民に受け入れられ……」。
11時52分、NHKが万葉集の出典の文章を記したフリップを見せていた。他局はどこもフリップを作成していない。事前に知って
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