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左遷?想定外の南スーダン赴任。野球はできるか 

野球人、アフリカをゆく(1)荷物の中から、あきらめて置いてきたはずのものが……

友成晋也 一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構 代表理事

atdr/shutterstock.com拡大atdr/shutterstock.com

「赴任先、南スーダンでしょ。左遷?」

 2018年8月。晴れた湘南の海辺にて。

 「でさ、友ちゃんは、いったい何をやらかしてしまったわけ?」

 できもしないボディボードを抱えて海辺ではしゃいでいた井下良昭が、人一倍の人懐っこさ満開の笑顔を浮かべ、仲間から離れて一人、砂浜に上がってきた。

 53歳のおっさんのくせに、上下とも鮮やかな青い模様の水着姿は、若作りに成功しているようで、実年齢よりもずっと若く見える。

 周囲に聞かれまいと気を使ってか、急にひそひそ声で話しかけてきた井下の神妙な顔に、思わず「ぷっ」と吹いた。

 「何を、って、別に何もやらかしてないよ」

 こちらも初めてボディボードを持たされて、湘南の海岸に連れ出されたものの、一緒にいる小学校時代の友人たちに、何か指導されるわけでもない。どうしたものかと浜辺で途方に暮れていた時に、不意打ちで質問をくらい、思わず苦笑いで返す。

 「なんだよ、いきなり人聞きの悪いことを」

 「だってさ、赴任先、アフリカの南スーダンなんでしょ? 友ちゃん、それ、左遷ってやつだろ? 海外に疎い俺でさえニュースくらいは聞いたことがあるよ。アフリカの中でもすごく危ないところだろ」

 昔から友だち思いの井下は、私の肩を抱いて、「まあ、前を向いてな。友ちゃん、そのうち、きっといいことある」と確信に満ちた表情で、海を見ながらささやいた。

ネガティブ記事のオンパレード

 確かに、そう思われるのも無理ないな。

 親友の心配顔と慰めの言葉に、妙に納得しながら、3度目のアフリカ勤務の打診、すなわち南スーダン行き、をもらった4カ月ほど前の日のことを思い出した。

 あの日の朝一番、職場の上司から赴任先の打診を受けた私は、オフィスの自分の机に戻るなり、ネットに「南スーダン」を打ち込んだ。待つこと数秒。アップされた画面を見て、思わずキーボード上の指が止まった。

「南スーダン おぞましい内戦の実体 国連施設も襲撃される」
「15人の兵士が女性を輪姦…日本人だけが知らない南スーダンの惨状」
「南スーダンを逃れる難民が150万人に」
「拉致された国連などの関係者ら、無事解放 南スーダン」

 出るわ、出るわ。文字どおり、ネガティブ記事のオンパレードである。楽しそうな記事は、一個もヒットしない。

 こんなところで、いったいどんな仕事ができるというのか……。

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筆者

友成晋也

友成晋也(ともなり・しんや) 一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構 代表理事

中学、高校、大学と野球一筋。慶應義塾大学卒業後、リクルートコスモス社勤務を経てJICA(独立行政法人国際協力機構)に転職。1996年からのJICAガーナ事務所在勤時代に、仕事の傍らガーナ野球代表チーム監督に就任し、オリンピックを目指す。帰国後、2003年にNPO法人アフリカ野球友の会を立ち上げ、以来17年にわたり野球を通じた国際交流、協力をアフリカ8カ国で展開。2014年には、タンザニアで二度目の代表監督に就任。2018年からJICA南スーダン事務所に勤務の傍ら、青少年野球チームを立ち上げ、指導を行っている。著書に『アフリカと白球』(文芸社)。

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