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日本の選挙制度は世界とこんなに違う

今年は選挙イヤー。日本の選挙制度についていま一度見つめ直そう

登 誠一郎 日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長 元内閣外政審議室長

1.選挙人名簿への登録制度

(1)選挙のたびにマスコミが問題にするのは、投票率の低さである。ある民間の選挙関連研究所の調査によると、世界196か国のうち、日本の国政選挙投票率は158位、G7の中でも下から2番目である。この原因として、国によっては投票を義務制にしたり、棄権には罰則まであることなども指摘されるが、より大きな理由は、選挙人名簿への自動登録制にあると思われる。すべての日本国民は18歳になると、3か月以上の住民登録のある市町村役所において選挙人名簿に登録され、国政及び地方選挙の際には、投票所入場券が自動的に郵送されてくる。これは日本では当たり前のように受け止められているが、多くの外国ではそうではない。一定年齢に達すると、選挙権を行使したい人は、自らの意思で選挙人名簿に登録手続きを行う必要がある。役所が自動的には登録はしてくれないのである。これは個々人に投票の意思表示があることを示すものであり、選挙に関する自覚を促す役割を果たしている。

(2)日本のような制度は一見、より民主的とも思われるが、現実的には、選挙民としての自覚と責任感のない人も投票することになる。このような人は、政策を吟味してどの候補者がふさわしいかについて真剣に考えることなしにムードで投票を行ったり、第3者からの頼みで無責任な投票も行いかねない。政治の世界ではよく「民意」という言葉が使われるが、これはこのような人の意見も含めたすべての国民の「総意」をいうのであろうか。国会が国権の最高意思決定機関であるならば、その構成員を決める選挙においては、投票所入場券が郵送されてくるから惰性で投票するのではなく、自分の投票態度に責任を持てる人のみが投票すべきではなかろうか。そのために望ましい選挙制度は、投票の前提として各個人が自分の意思で選挙人名簿に登録することと思う。因みに、海外に住む日本人は、日本の選挙に投票する意思がある場合には、大使館または領事館まで足を運んで、自ら登録して初めて投票の資格を得る必要がある。

(3)投票率の高低をうんぬんする場合に、全有権者数における割合ではなく、選挙人名簿登録者数(すなわち自分の意思で登録した人)における投票者の割合を論じた方が、意味が大きい。また事前の投票予定調査においても、ランダム調査をする場合に、全有権者(一定年齢以上の総人口)を対象とするのではなく、選挙人名簿登録者を対象にした方がより正確な結果が出る。ほとんど選挙に行く意思も可能性もない人に、電話で投票態度などを聞いても、調査結果の不正確性が増すだけである。

拡大Tomohiro Yamashita/shutterstock.com

2.記号式(または電子式)投票制度

(1)日本の国政選挙はすべて記名式(自書方式)投票が行われているが、近年、地方選挙においては記号式も散見されている。先進国で記名式投票が行われているのは、実は日本のみである。これは識字率ほぼ100%という日本だからこそ可能な制度であるが、以下のような大きな問題をはらんでいる。

①無効票が多く出やすい。
 誤字、脱字、悪筆なども多く、判読に時間がかかるのみならず、判定が恣意的になる恐れがある。

②開票に時間がかかり、費用がかさむ。
 総選挙の総費用約600億円のうち、約半分は人件費である。投票を記号式または電子式にすると、開票時間が大幅に短縮され、費用の節減になる。

(2)他方、記号式や電子式投票の問題点としては、並び順による有利、不利や補充立候補の際の投票方法などが指摘されるが、これらは選挙結果に大きな影響を及ぼすものとはならない。

(3)ではなぜ日本の国政選挙で、記名式投票が一貫して行われて来たのであろうか。以前ある自民党の大物議員A氏に聞いたら、「選挙では自分の名前を書かせるのが、選挙運動の成果であり、醍醐味。また、自分の選挙区では30年以上も前の父親の代から、村の実力者が村民に対して総選挙ではAと書けと指示してきた。それを記号式にすると、押し間違えも生じる」との答え。なるほど日本の国会議員には2世、3世議員が多いことが理解できた。

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筆者

登 誠一郎

登 誠一郎(のぼる・せいいちろう) 日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長 元内閣外政審議室長

兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省(1965)、駐米公使(1990)、ロサンジェルス総領事(1994)、外務省中近東アフリカ局長(1996)、内閣外政審議室長(1998)、ジュネーブ軍縮大使(2000)、OECD大使(2002)を歴任後、2005年に退官。以後、インバウンド分野にて活動。日本政府観光局理事を経て、現在、日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長、安保政策研究会理事。外交問題および観光分野に関して、朝日新聞「私の視点」、毎日新聞「発言」その他複数のメディアに掲載された論評多数。

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