メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

イチローにあげ損なった国民栄誉賞とデモクラシー

三島憲一 大阪大学名誉教授(ドイツ哲学、現代ドイツ政治)

イチロー拡大国民栄誉賞を辞退したイチロー。その真意は不明だが……

 現役からの引退を表明したイチローに国民栄誉賞を、という話が政府筋で考慮されていたようだ。そして、一般にも多くの人々にそうした予想というか、期待というか、雰囲気が広がり始めていたところに、イチローの方から代理人を通じて政府に、「人生の幕を下ろした時にいただけるよう励みます」というメッセージが届いたとか。官邸中枢はさぞがっかりしたことだろう。安倍政権に批判的な立場からのネットへの書き込みには「ザマアミロ」などというのもある。

 すでに2回謝絶ないし固辞しているそうだが、今回もイチローの真意はわからない。内心、「そんなもの、もらってなにになる」と思っているのかもしれないし、本当に「人生の最後になってから」と謙虚に考えているのかもしれない。一般にプロのスポーツ選手は、日本社会の全体のあり方を根本的に批判するような知的枠組みには育っていないので(例えば先輩後輩の序列という無意味は彼らの心に深くしみついている)、安倍政権や自民党支配がいやだから、という確率は低いだろう。

 断り方がうまかったのか、球道一筋という普段からの印象がよかったのか、ローラさんのように辺野古移転のあり方を批判した芸能人に対するのと違って、バッシングが起きなかったのも面白い。ネトウヨも動かなかったようだし、コマーシャルのキャンセルの話も聞かないから、広告会社も無反応だったらしい。「こんな汚れた政府からはいただくわけにいかない」という発言だったら、蜂の巣をつっついたような大騒ぎになっていたろうが、そんなことは期待するのが無理というものだ。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

三島憲一

三島憲一(みしま・けんいち) 大阪大学名誉教授(ドイツ哲学、現代ドイツ政治)

大阪大学名誉教授。博士。1942年生まれ。専攻はドイツ哲学、現代ドイツ政治の思想史的検討。著書に『ニーチェ以後 思想史の呪縛を超えて』『現代ドイツ 統一後の知的軌跡』『戦後ドイツ その知的歴史』、訳書にユルゲン・ハーバーマス『近代未完のプロジェクト』など。1987年、フィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞受賞、2001年、オイゲン・ウント・イルゼ・ザイボルト賞受賞。

三島憲一の記事

もっと見る