メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

無料

「ノートルダムが燃えている…」

今度あなたがパリを訪れるとき、街は深く傷ついているにしても、もっと強くなっている

大野博人 朝日新聞編集委員

拡大beboy/shutterstock.com

なすすべのない無力感

 天に向かってまっすぐに伸びていた塔が崩れ落ちていく――。

 パリのノートルダム大聖堂炎上の映像は破局的な出来事だという印象を見る者に与える。たとえば9.11米国同時多発テロで崩れ落ちていったニューヨークのツインタワーを連想させる。

 崩壊の事情も人的被害の大きさもまったく違うけれども、こうした映像が人の心に引き起こす感情には似ているところがあるのかもしれない。

 なすすべのない無力感。

 パリに住む友人は、発生の15分後に目撃した。乗っていた地下鉄が少し地上を走る区間であるオステルリッツ橋付近にさしかかって気付いた。

 「ノートルダムが燃えている」。彼女に言われて外を見たほかの乗客たちは呆然とし、車内は沈黙が支配したという。

 帰宅してテレビをつけると「黙示録的だった」。さらなる崩壊に脅かされる「800年の歴史と必死で食い止めようとする消防隊員たち」。見続けることに耐えられずテレビを消してしまったそうだ。

 自分たちが誇る社会の歴史や繁栄の象徴。それが折れていく姿を目の当たりにして人は言葉を失う。映像の衝撃は大きい。


関連記事

筆者

大野博人

大野博人 朝日新聞編集委員

1981年朝日新聞入社。ジャカルタ、パリ、ロンドンの特派員などを経て、2012年に論説主幹。現在は編集委員。