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隠岐にみる「島国」/日韓共生へのリアリズム

【19】ナショナリズム 日本とは何か/隠岐にみる「島国」④

藤田直央 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

拡大隠岐諸島「島後(どうご)」の那久岬から日本海を望む。左上は「島前(どうぜん)」の島々=2月1日、島根県隠岐の島町那久。藤田撮影

 近代国家としてひとまとまりの存在になることの追求。それをナショナリズムと呼ぶなら、領土と国境へのこだわりはその中核をなす。近代に連鎖して生まれた諸国家は、境界を仕切り合ってきた。「国民」はその争いの地に住むどころか、行ったこともない人たちが大半だが、それでも領土の境目への思いをはせ、時に愛国心をたぎらせる。

 では、まさに領土をめぐる争いに直面する地に住む人々はどうか。その地に対する「愛郷心」と「愛国心」の間合いは、どんなものなのだろう。

日韓からほぼ等距離の竹島

拡大竹島周辺の地図=政府の領土・主権展示館の資料より

 その思いに耳を傾けようとフェリーで隠岐を訪ねたのは、今年2月だった。

 島根半島から日本海を北へ67キロ。隠岐諸島で最大の島である「島後」にある島根県隠岐の島町は、そこから北西へ158キロの竹島を管轄する自治体である。ただ、その竹島は、西方にある韓国に「独島」として実効支配されてきた。

拡大8月25日、軍事訓練で竹島(韓国名・独島)に展開する韓国海軍の特殊部隊要員=韓国海軍提供
 韓国は、「東海領土守護訓練」として竹島を含む日本海の島々を守る軍事訓練をしてきており、今年8月下旬にも実施。竹島問題は今もきしむ日韓関係の主因のひとつになっている。

 朝鮮半島から竹島へは217キロ。日本の本土から同じぐらいの距離だ。その竹島を隠岐の島町が管轄するのは、かつて島後の人々がアシカ漁をしていた縁からだ。

 だが、韓国の沿岸警備隊が竹島に駐留を始めてからはや65年がたち、かつて漁に携わった島後の人々はほぼ他界している。


筆者

藤田直央

藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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