西田 亮介(にしだ・りょうすけ) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授
1983年生まれ。慶応義塾大学卒。同大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。専門は情報社会論と公共政策。著書に『ネット選挙』(東洋経済新報社)、『メディアと自民党』(角川新書)、『マーケティング化する民主主義』(イースト新書)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
とにかく「明るい」ニュースの氾濫で何が報じられていないかに思いをいたそう
公文書の改竄(かいざん)に統計不正、閣僚の失言など、平成末の政治の深刻さを覆い隠すかのように、「改元」は社会に華やいだ雰囲気をもたらしているようだ。
浮かれた空気は新元号の発表前からあった。新聞やテレビでは、通行人や女子高生に面白おかしく新元号を予想させるなど、新元号をネタにするニュースが溢れた。本番の「令和」の発表にあたっては、官邸がInstagramの予告機能を使ったほか、TwitterやYouTubeといったSNSの首相官邸アカウントを通して、インターネットでライブ配信が行われた。もちろん伝統的なマスコミも「改元シフト」で手厚く報道した。
かくして、新旧メディアが総動員で令和への期待感が賑々(にぎにぎ)しく演出されたのである。
「成果」はどうだったか?
2019年4月10日の読売新聞朝刊の「深読み視聴率 関東地区」欄は、
「多くの人々がテレビを通し、新元号の発表を見守ったに違いない。1日の各局のニュースが軒並み高視聴率だった。新元号発表の瞬間を中継した午前11時からの『ニュース』(NHK)が19.3%で、新元号を報じたこの日の番組で最も高かった」
と書いている。
元号を公表した菅義偉官房長官がネットで人気とも報じられている。ネット配信も行われたので、令和を掲げて見せた菅官房長官は、若い世代の間でも「令和おじさん」として認知されるようになったようだ。菅官房長官が得たのは新しい愛称だけではない。直後の世論調査では、「ポスト安倍」の候補として浮上したと産経新聞は報じている。(【産経・FNN合同世論調査】令和おじさん「ポスト安倍」にも浮上 菅氏が存在感)
また、令和公表直後に実施された各社の世論調査は、内閣支持率の大幅改善を伝えている。新元号の発表はメディアと政権の双方にとって好ましい影響を与えたといえそうだ。