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[132]「文明国にあってはならない暴挙」

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

再逮捕前にインタビューに答える日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者=仏民放ニュース局LCIのホームページから再逮捕前にインタビューに答える日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者=仏民放ニュース局LCIのホームページから

4月2日(火) 朝、テレビでテレ朝のモーニングショーをみていたら、東大の史料編纂所教授の本郷和人さんという学者が、令和について「令」で思い出すのは、論語の「巧言令色鮮シ仁」(こうげんれいしょくすくなしじん)という言葉ですとか、さらりと言っていた。この本郷さんという学者さんは本当にユニークで面白い。「国書の方がいいよねって言ったって、当時の知識人の教養は漢学であって、大体、元号ってもともと中国のものですよ」とか。いいなあ、こういう自由な精神の持ち主である学者さんは。

 午前中「報道特集」の定例会議。その後、新聞各紙の元号報道をさらりとチェックしてみる。どの新聞も基本的には新元号決定とその事実経過、意義を報じる無味乾燥の記事が多かった。朝日が第2社会面に内田樹のコメント、政治ショー化を批判したモデレートな談話。東京新聞は特報面で、「違和感あり 首相会見 『まるで所信表明』」と報じていた。そうしたなかで、信濃毎日新聞が今日の社説で、「新元号の決定 国民の存在はどこにある」とかなり痛烈に批判していることがわかった。「(元号は)首相の私物か?」。さすが桐生悠々のいた信濃毎日だ。テレビと違って活字メディアは多様な展開ができるはずなのだが、そうはなっていないのではないか。

新しい元号「令和」を伝える各紙号外新しい元号「令和」を伝える各紙号外

 その後、横浜に移動。6月の集会のことでNさんらと打ち合わせ。いま一つ完全には趣旨が理解できない部分が残る。沖縄タイムス社の「新・わじわじー通信」のあとがきを書く。元号騒ぎについても触れることにする。表紙のデザインのことなど相談すべきこと多し。

大昔と今とで検察は決定的に変わった

4月3日(水) 某案件。本当によく頑張っていると思う。長期調査案件。もの別れだけは避けなければならない。SGさんのためにも。本当にまいった。「調査情報」の原稿を書く。アナーキズムについて。神保町の古書店「りぶる・りべろ」で金子文子の関係図書を入手する。黒色戦線社の本が埴谷雄高の跋文もついていて非常に参考になる。瀬戸内晴美(寂聴)の金子文子伝、その他を購入する。この本屋さんはとても個性的で、アナーキズム関係の書籍が割とたくさんある。壁には司修のエッチング作品もなにげなく売られていて面白い。

 ゴーン日産前会長関係で各所に取材。今夜かあしたにも何か動きがあるとの感触を得た。これは大変な騒ぎになるかもしれぬ。ゴーン前会長は記者会見を11日に開くと言っている。ゴーン・サイドのこうした動きを検察は座視していないだろう。直感的に言えば、つぶしにかかってくるだろう。弘中惇一郎弁護士事務所のまわりにはたくさんの報道陣。その後、中目黒のまえだや。

4月4日(木) 早朝にカルロス・ゴーン前会長が再逮捕された。午前5時50分にゴーン夫妻のいるアパートに特捜部の捜査官らが踏み込んで行ったという。フランスのメディアの知人から詳しい情報が入ってきた。20人くらいの捜査員が今もガサを続行中だという。夫人が外部と連絡できない状態になっているようだとも。キャロル夫人の友人が駆けつけて中に入ろうとしたら、「立ち入ることはできない」と追い返されたという。きのうの夜にもっといろいろとやっておくべきことがあったか。後悔先に立たず。いろいろな意味で。

 冷徹に考えれば、検察というところはとことんやる。彼らは、国際感覚とか「人質司法」批判なんかに聞く耳を持たない。裁判所の方はさすがに少しは気にかけている。同じように大方のメディアの検察担当記者も「人質司法」批判を気にかけている記者などいないと思ってよいのではないか。こういうことが言えるのは、僕自身が検察担当記者を3年経験したことがあるからだ。ロッキード事件裁判が続いていた大昔のことだが。その頃の検事で存命の方々は、堀田力さんや村田恒さん、高野利雄さんくらいかなあ。検察担当も切った張ったの世界だからネタをとるのに必死になっていたものだ。

 でも、当時と今とでは何か決定的に変わったように思う。検察は

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