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平成の「国民歌」…それは「翼をください」

秘話とともに昭和に生まれ/平成の「癒やし」に育ち半世紀

市川速水 朝日新聞編集委員

音楽教師に圧倒的人気

 平成とは、「大震災時代」への突入であり、拉致問題が明らかになり、小学校に侵入されて児童が命を落とすという痛ましい事件があり、天皇ご夫妻が震災被災者を慰問する旅で各地を訪れ、障害者問題に光が当たった。サッカーW杯出場という嬉しいニュースもあった。

 これら平成史を縁取り、要所ごとで歌われ続けてきた、「国民歌」ともいえる歌が「翼をください」なのだった。

拡大「赤い鳥」から分かれた「ハイ・ファイ・セット」のデビュー当時

 ところで、なぜみんなそろって歌えるのか。

 学校の音楽の授業の影響が大きいといえるだろう。この曲が教科書の定番になって久しい。

 最大手の教育芸術社が発行する教科書では小、中学校、高校全部で採用している。同社によると、「赤い鳥」が解散した2年後の1976年の検定分から高校、中学、小学の順で採用され、その後も小・中は途切れることなく、延々と採用が続いている。高校版でも現在、採用されている。

 小学校はメロディーを中心に、中学では男女の合唱のハーモニーやアレンジを楽しむ工夫がされている。同社の教科書が採用されるシェアは中学校で8割、小学校7割、高校でも5割強と圧倒的だ。

 音楽の授業で同社の教科書を使ったとすれば、50代から小学生まで、すべてがこの曲を一度は習うことになる。いつの間にか、ふとした場面で「この曲なら歌える」と合唱できてしまうのも自然なことだろう。

 「教科書改訂のたびに、どんな歌を載せるか、音楽教師の方々にアンケートをしてきたのですが、『翼』は圧倒的に支持率が高く、幅広い。流行の寿命が短い日本のポップスとしては特別なことです。これに匹敵する曲はないでしょう」

 第一編集部長の今井康人さん(59)はそう話す。

 「覚えやすく歌いやすいメロディーと、自由を夢見て命の息吹が感じられる歌詞が根強い人気の理由ではないでしょうか」

 今年3月に検定結果が公表された小学校の音楽教科書にも掲載され、令和の教科書にも引き継がれることが決まったばかりだ。

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筆者

市川速水

市川速水(いちかわ・はやみ) 朝日新聞編集委員

1960年生まれ。一橋大学法学部卒。東京社会部、香港返還(1997年)時の香港特派員。ソウル支局長時代は北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議を取材。中国総局長(北京)時代には習近平国家主席(当時副主席)と会見。2016年9月から現職。著書に「皇室報道」、対談集「朝日vs.産経 ソウル発」(いずれも朝日新聞社)など。

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