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「令和」初の参院選を「春の陣」から展望すると

「勝者なき」統一地方選から見えてきた与野党それぞれの弱点と可能性

前田直人 朝日新聞世論調査部長

有権者の関心が低かった「春の陣」

北海道知事選で初当選を決め、万歳する鈴木直道氏(中央)=2019年4月7日、札幌市中央区拡大北海道知事選で初当選を決め、万歳する鈴木直道氏(中央)=2019年4月7日、札幌市中央区
 「春の陣」の結果を検討するうえで、留意すべきポイントがある。それは、総じて有権者の関心が低く、投票率が過去最低を更新する選挙が相次いだという点だ。

 投票率が低くなれば、当然、組織化されていない無党派層の影響力は限定的になる。政党の地力、すなわち「岩盤」の厚みを測るには適しているが、いまや全体の半数近くを占める最大勢力に発達した無党派層の重みが枠外に多く存在することは、常に意識しておかなければならない。

 そこで、その無党派層がこの春の決戦でどう動いたかを、注目度が高かった北海道知事選、沖縄3区補選、大阪12区補選で朝日新聞社が行った出口調査の結果からピックアップしてみよう。

▽北海道知事選(投票率58.34%)
無党派層の59%が自公推薦の鈴木直道・前夕張市長へ、41%が野党系の石川知裕・元衆院議員へ→自公系・鈴木氏に軍配。

▽衆院沖縄3区補選(投票率43.99%)
無党派層の79%が無所属で野党系の屋良朝博氏へ、21%が自民の島尻安伊子・元参院議員へ→野党系・屋良氏に軍配。

▽衆院大阪12区補選(投票率47.00%)
無党派層の35%が無所属の樽床伸二・前衆院議員(旧民進党出身)へ、34%が維新の藤田文武氏へ、22%が自民の北川晋平氏へ、9%が「野党共闘」をアピールした無所属の宮本岳志・前衆院議員(共産党出身)へ→維新・藤田氏に軍配。

勝負を決めた無党派層の動向

衆院沖縄3区補選で当選を確実とし、万歳する屋良朝博氏(中央)。右は玉城デニー沖縄県知事=2019年4月21日、沖縄県沖縄市拡大衆院沖縄3区補選で当選を確実とし、万歳する屋良朝博氏(中央)。右は玉城デニー沖縄県知事=2019年4月21日、沖縄県沖縄市
 この三つの選挙で、当日の出口調査での投票者に占める無党派層の割合は、北海道が2割、沖縄3区が4割、大阪12区が2割だった。沖縄は国政野党系が県政与党、大阪は維新が府政与党という独特な地域事情はあるが、無党派層の動向がそれぞれに決め手となっていることがわかる。

 北海道は立憲の地力が比較的しっかりしていることで知られるが、道内の政党支持率をみると、それでも与野党の差は大きい。知事選の情勢調査にあわせて行った道内世論調査では、自民党27%、立憲9%、公明4%、共産4%。無党派層は5割超に及んでいた。

 世論調査は投票に行かない有権者も対象に含むため、選挙結果とは隔たりがあるものだが、野党が自公を崩すためには、野党支持層を固めきり、自公支持層にも一部食い込み、無党派層を引きつけて投票所に足を運んでもらうしかない。しかし、今回の知事選で野党勢力はそれぞれの支持層すら十分に固められず、頼みの綱の無党派層でも後れをとった。

 対照的なのは沖縄3区補選である。沖縄県内でも政党支持率のナンバーワンは自民党。ただ、沖縄3区内の世論調査では、自民16%、共産4%、社民4%、公明3%、立憲1%、国民1%、自由1%と既成政党支持層がかなり薄く、かわりに無党派層が7割と大きなかたまりを形成していた。

 しかも、沖縄の無党派層は積極的に投票に行っていた。自民と公明がいくら自らの支持層を固められたとしても、これだけボリュームのある無党派層で差をつけられたら、ひとたまりもない。しかも争点は明確で、世論調査でも出口調査でも、投票の際に重視したのは「基地問題」が最多だった。自公にとっては、抜け出そうにも抜け出せない「アリ地獄」のような状態である。

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筆者

前田直人

前田直人(まえだ・なおひと) 朝日新聞世論調査部長

朝日新聞世論調査部長。1992年、入社。山口支局、西部本社社会部(福岡)で勤務し、2000年に政治部。首相官邸、自民党、民主党などを担当し、政治部デスク、編集委員(政治担当)をへて、16年より現職。コラム「政治断簡」(2013~17年)、書籍「プロメテウスの罠9~二人の首相」などを執筆。