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「令和」初の参院選を「春の陣」から展望すると

「勝者なき」統一地方選から見えてきた与野党それぞれの弱点と可能性

前田直人 朝日新聞世論調査部長

鉄壁に見える「自公共闘」にももろさ

 北海道や沖縄とはまた違う独特な趣が感じられたのが、混戦となった大阪12区補選である。維新の強さは言を俟(ま)たないが、与野党ともに参院選では必須となる「自公共闘」と「野党共闘」における課題を抱えていると思う。

当選確実となり、支援者と「頑張ろう」コールをする維新の藤田文武氏(中央)=2019年4月21日、大阪府寝屋川市拡大当選確実となり、支援者と「頑張ろう」コールをする維新の藤田文武氏(中央)=2019年4月21日、大阪府寝屋川市
 この補選は、大阪12区を制してきた自民党の北川知克氏の死去に伴うもので、北川氏の甥・晋平氏が立候補。自民は「弔い合戦」で議席死守を狙ったが、統一地方選前半戦の大阪府知事・大阪市長ダブル選挙で圧勝した維新の勢いに押され、手痛い敗北を喫した。

 大阪で自公は府政野党である。全国の多くの地域で、野党が自公に勝つには、無党派層で優位に立つ必要があるのと同じように、大阪で維新に自公が打ち勝つためには、無党派層の獲得が不可欠な条件だった。もともと大阪の無党派層は、やや反維新よりの傾向があるからだ。

 だが、自公×維新×旧民進出身×共 産出身の野党系という複雑な構図となったことで、反維新票は分散。自公候補が無党派層を味方に付けることができなかったことで、勝機は断たれた。それどころか、当日の出口調査をみると、自公支持層すらも7割に満たない歩留まりに終わっていた。

 無党派層を奪われた勢いを受け、自らの支持層も崩れていくという現象は、自公が敗北するときの定型パターンである。大阪も沖縄も「地域の特殊事情」と総括する向きもあるが、鉄壁にみえる自公協力も、逆風にさらされるともろくも崩れていくということを示す事例として、一定の普遍性をもっているととらえた方がよいだろう。

課題だらけの「野党共闘」

 だが、より大きな課題を突きつけられたと感じるのは、野党共闘のあり方である。そもそも大阪12区補選では、自公VS維新の激突にはじかれ、入り込む隙間も見つけられないまま、ゲームオーバーとなった。

 「野党統一候補」をめざした宮本氏は衆院議員を辞職し、共産党公認ではなく無所属で立候補して、選挙運動でも「ホンキの共闘」をアピール。共産と自由が推薦したほか、自主投票を決めていた立憲や国民の国会議員、幹部らも応援や激励に駆けつけた。しかし、結果は最下位で、相対得票率は一桁にとどまった。

 当日の出口調査では、野党支持層は少なからず旧民進出身の樽床氏に流出し、無党派層の支持は1割足らず。とりわけ目を引いたのは、夏の参院選で野党共闘を「進めるべきだ」と答えた層が5割超に達していたのに、そのうち宮本氏に投票したとの回答が10%にとどまったことだ。

Andrii Yalanskyi/shutterstock.com拡大Andrii Yalanskyi/shutterstock.com
 これまでの世論調査をみても、野党は協力すべきだと考えている有権者は少なくない。ただ、決してそれが最優先というわけではない。有権者が選挙で重視するのは、一貫して社会保障と経済政策が不動のツートップ。野党共闘という「手段」を対外的にアピールしたところで、多数の有権者の心に響くわけでもない。

 今回の「春の陣」で見えてきたそれぞれの弱点は、「夏の陣」に続く共闘戦略の課題となる。国政野党が前面に立たずに、政策的争点を前面に掲げて、裏方として候補者を押し上げていく衆院沖縄3区補選をひとつの「共闘モデル」にしようとの呼びかけが、立憲や国民の幹部らから出ているのは、そうした問題意識の表れだろう。

 夏の参院選のカギを握るのは、32ある1人区である。ここを与野党どちらがとるかで、「オセロゲーム」よろしく様相は一変する。ただ、自公にせよ、野党にせよ、共闘は勝つために必要な手段には違いないが、それだけで勝てるわけではない。無党派層の心をどうつかむのか。そのための政策とメッセージを練り上げ、それをどのように効果的に打ち出していくか。そこが、大型連休明けの大きな課題となる。

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筆者

前田直人

前田直人(まえだ・なおひと) 朝日新聞世論調査部長

朝日新聞世論調査部長。1992年、入社。山口支局、西部本社社会部(福岡)で勤務し、2000年に政治部。首相官邸、自民党、民主党などを担当し、政治部デスク、編集委員(政治担当)をへて、16年より現職。コラム「政治断簡」(2013~17年)、書籍「プロメテウスの罠9~二人の首相」などを執筆。