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日本のフリーメイソンのこと知ってますか?(上)

知られざる戦後日本におけるフリーメイソンの歴史 河井弥八の入会から進級まで

小宮京 青山学院大学文学部教授

日本におけるフリーメイソンの歴史

 日本におけるフリーメイソンの歴史は意外と古く、江戸時代後期まで遡る。長崎の出島を訪れたオランダ人が、フリーメイソンを日本に伝えた嚆矢(こうし)である。日本人では、幕末にオランダを訪れた西周や津田真道が1864(元治元)年に入会したという記録が存在する。

 昭和の戦前期、日本にも複数のロッジ(会所)が存在した。戦争が始まると諸外国との関係を疑われ、活動停止に追い込まれたが、戦後、活動を再開。「フィリピン・グランド・ロッジ傘下に占領軍の関係者を中心として日本国内でロッジの開設が始まり、昭和22年(1947)から昭和31年(1956)の10年間に16のロッジが設立されました。占領下の日本において、メイスン会員であった連合軍総司令官のマッカーサー元帥は民主主義精神を基本とするフリーメイスンの理念を積極的に奨励しました。その結果、日本人の参加が可能となり、昭和25年(1950)には日本で初めて5名の国会議員を含む7人の日本人が入会しました」という(「日本のフリーメイスン」2018年10月19日閲覧)。

 一例を挙げると、戦後に横須賀米国海軍基地司令官を務めたデッカーの自伝には、横須賀にロッジを作る様子が記されている(ベントン・W・デッカー、エドウィーナ・N・デッカー著、横須賀学の会訳『黒船の再来 米海軍横須賀基地第四代司令官デッカー夫妻回想記』Kooインターナショナル出版部、2011年)。

「一月五日入会式を挙ぐることを決定」

 もともと日本人の参加が認められていなかったフリーメイソンに、戦後になって参加が認められた。その経緯を河井日記で確認したい。引用する日記の出典は、尚友倶楽部/中園裕・内藤一成・村井良太・奈良岡聰智・小宮京編『河井弥八日記 戦後篇2 [昭和二十三年 ― 二十六年]』(信山社、2016年) と『河井弥八日記 戦後篇4 [昭和三十年 ― 三十二年]』(信山社、2019年)である。

拡大『河井弥八日記 戦後篇4 [昭和三十年 ― 三十二年]』(信山社、2019年)
 河井日記にフリーメイソンが初めて登場するのは1949年末である。

 「三島通陽氏の紹介にてFree Mason係(日本及朝鮮担当)少佐Michael Arthur Rivisto氏と会見し、茶菓を饗せられ説明を聴き、入会を慫慂せらる。右運動の真相を識り、従来の誤解を一掃したり」(12月18日)

 河井は12月20日に入会手続きを済ませた。さらに

「Free Mason準備会に出席す。Major Rivisto氏の外七、八名の米人あり。佐藤、三島、下条、高橋、植原、芝諸氏出席す。入会金は一人五千円に決せしに、それにては不足なるを以て可能だけ醵出することとす。又徳川宗敬氏の入会は第一回として取扱ふことに決定せらる。最後に明年一月五日入会式を挙ぐることを決定」(12月27日)

 日記から分かる通り、河井は準備会の段階から参加しており、戦後最初期の時点から勧誘されていた。12月18日の日記に「従来の誤解を一掃」とあるのは、戦前からフリーメイソンの陰謀論が広まっていたことを指すのだろう。つまり怪しい「秘密結社」ではないと判断したからこそ、河井は入会することを承諾したのである。

 河井と会見したリヴィストは、各方面でフリーメイソンへの入会を勧誘していた人物である(山屋明『日本のフリーメイスン』あさま童風社、1996年、170頁)。

 河井を勧誘した三島通陽(みしま・みちはる)も興味深い人物である。祖父は三島通庸であり、父・三島弥太郎の長男にあたる。戦前は貴族院議員を務め、戦後は国民協同党から1947(昭和22)年に参議院議員に当選した。余談だが、2019年の大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」の主人公・金栗四三の親友として登場する三島弥彦(みしま・やひこ)は、通陽の父・弥太郎の弟にあたる(尚友倶楽部・内藤一成・長谷川怜編『日本初のオリンピック代表選手 三島弥彦 伝記と史料』芙蓉書房出版、2018年)。

 三島が緑風会所属の参議院議員だった縁であろう。河井も含め、12月27日の日記に出てくる、佐藤尚武、下条康麿、高橋龍太郎、徳川宗敬らは全員、緑風会所属の参議院議員だった。ちなみに徳川宗敬は一橋徳川家第12代の当主である。

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筆者

小宮京

小宮京(こみや・ひとし) 青山学院大学文学部教授

東京大学法学部卒業。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は日本現代史・政治学。桃山学院大学法学部准教授等を経て現職。著書に『自由民主党の誕生 総裁公選と組織政党論』(木鐸社)、『自民党政治の源流 事前審査制の史的検証』(共著、吉田書店)『山川健次郎日記』(共編著、芙蓉書房出版)、『河井弥八日記 戦後篇1-3』(同、信山社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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