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沖縄県民投票と基地問題を世界はどう見ているのか

安全保障だけでなく民主主義、環境、人権といった世界の「共通語」で語られる沖縄問題

星野英一 琉球大学名誉教授 同大島嶼地域科学研究所客員研究員

日本政府の方針を強調した英「BBC」

住宅街に囲まれた米軍普天間飛行場=2019年3月12日、沖縄県拡大住宅街に囲まれた米軍普天間飛行場=2019年3月12日、沖縄県
 「日本政府の方針を強調する報道」の代表はイギリスのTV「BBC」(2月25日、Okinawa: Tokyo to overrule referendum on US base)だ。日本政府の方針を中心に据えた編集で、安倍首相の言い分をタップリ紹介している。「米国が辺野古を望んでいる」のような議論の余地のある記述もあり、沖縄への米軍基地の集中に言及してはいるもの、被害については1995年の集団レイプと2016年の暴行殺人のみが取り上げられている。全体として、政府の方針は変わらないという日本政府寄りの中味になっている。

 事実誤認というか、厳密ではない情報が気になったのが、ロイター通信の記事による米紙「ニューヨーク・タイムズ」(4月8日、Outnumbered and Elderly, Okinawa Protesters Oppose U.S. Military Runway)の報道だ。「基地は5年以内に完成する」「多くの日本人は海兵隊全部に出て言って欲しいと思っている」など根拠の怪しい記述もあるが、中国の脅威があるため、米軍はすぐには出て行かないし、日本政府は県民投票の結果にかかわらず工事を続けるという風に読める。若い人にとっては騒音が深刻な問題だ(野球をしていても球を打った音が聞こえない!)という締めくくり方は、基地被害のほんとうの深刻さを和らげている印象だ。

沖縄の「NIMBY」を強調?英紙「ガーディアン」

 AP通信による英紙「フィナンシャル・タイムズ」の記事(2月25日、Referendum highlights attempt by US and Japan to push base through with no local consent)は玉城知事を「反基地闘争のリーダー」と形容するなど心配な記述もあるが、県民投票の目的が「政府が地域の声を無視している」ことを照らし出すところにあると、的確に指摘している。新基地建設の問題点は書かれてはいるが、投票結果が中国を利することになるおそれがあるとし、「結果にかかわらず方針は変わらない」という県民投票以前の菅義偉官房長官の言葉で締めている。

 英紙「ガーディアン」の記事(2月22日、Okinawa referendum: everything you need to know、Residents of Japanese island will vote on Sunday about controversial plan to move US military base)は投票前のものだ。辺野古の新基地建設に対する批判の概要が書かれているが、絶滅危惧種であるジュゴンと2千人の住民の安全に焦点があたっている印象で、「多くの沖縄人は普天間を閉鎖し、代替施設は日本のどこか他所に作ることを望んでいる」との書きぶりは、沖縄の「NIMBY」(他所ならいいがウチの裏庭にはごめんこうむる)が強調されているようにも感じられる。

 基地が沖縄に集中していることについても書いているが、南シナ海・東シナ海での緊急事態や北朝鮮の核にも言及していて、安全保障の方が重要だと言っているようにも聞こえる。最後は菅官房長官の「沖縄の人びとにはっきりわかる仕方での負担軽減を」という言葉で締めくられており、日本政府寄りの記事だと言える。

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筆者

星野英一

星野英一(ほしの・えいいち) 琉球大学名誉教授 同大島嶼地域科学研究所客員研究員

1953年、東京都生まれ。上智大学外国語学部卒業、成蹊大学法学政治学研究科修了、デンバー大学国際学大学院修了。琉球大学短期大学部助教授、法文学部教授、東京女子大学教授、琉球大学人文社会学部学部長を経て現職。専門は国際関係学、国際政治経済論。著書に『沖縄平和論のアジェンダ』(法律文化社、共著)、『Debating Human Rights』(Rutledge、共著)、共編著に『Self-determinable Development of Small Islands』(Springer)等。